レビュー
概要
『かくしごと』第1巻は、マンガ家である父親・後藤可久士が辛辣なギャグと家族愛の間を行き来しながら「娘に職業と作風を知られたくない」という嘘と秘密を抱えつつ日常を回すコメディです。可久士は、描く作品のネタばらしを徹底して拒否しながら、娘・姫との会話で小さな嘘を重ねていく。読者は、父娘の距離が一コマ一コマの漫才のリズムで変化しながら、笑いと切なさが混ざる空気を味わいます。
読みどころ
1) ギャグと毒のあるトーン
久米田康治らしいブラックなユーモアが、家庭の中の出来事とマンガ業界の出来事の両方で飛び交う。姫が可久士のラフ原稿を見て「何でこんな絵を描くの!」と怒ると、可久士が必死で「それは教師が…」と白を切るシーンなど、嘘に嘘を重ねる惨状が笑いに変化します。
2) 家族の距離感
姫は父を信じているようでいて、その目線はどこか鋭く、可久士はそれを避けながらも親子の会話を丁寧に育てる。幼いながらも「お前の作品は?」といった質問を繰り出す彼女の成長が、父の秘密を守る張りつめた空気をやわらげていく。
3) マンガを描く苦悩の描写
自宅での原稿執筆、アイデア出しの苦悩、編集部との打ち合わせ、ギャラの交渉なども挿入され、漫画家の仕事を垣間見る構成。スケジュールに追われる可久士は疲れた顔を見せながらも、姫のために美味しいご飯をつくるなど、家庭と仕事のギャップがリアルに描写される。
類書との比較
秘密を抱えた父娘の物語としては『ちびまる子ちゃん』の家族群にも近い雰囲気があるが、本作は絵柄の奇抜さとブラックユーモアを強めている点で異なる。『うさぎドロップ』よりもマンガ家の苦悩に踏み込み、奥深さとしては『働きマン』のように職業をテーマにしながら、「娘との距離を守る愛」が重なる。
こんな人におすすめ
- マンガ家の裏側をブラックなギャグで覗きたい読者
- 父子/父娘の距離感を笑いと切なさで味わいたい人
- 漫画だけでなく、仕事と家庭の両立の現場を感じたい人
- 久米田康治の毒舌が好きなファン
感想
「知られたくない職業」という秘密が、日常の掛け合いの中で少しずつ漏れていく描写が、読み終えたあとにもじわじわと残った。姫の純朴さが、可久士の仮面をも引き剥がしていくようで、笑いながらも胸が熱くなる。つねに嘘をつきながら、嘘が世界を救うという構図に読者も巻き込まれる、重層的な1巻でした。