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レビュー

概要

『新装版 BLAME!』第1巻は、終わりの見えない巨大構造体の世界を、主人公・霧亥がひたすら進んでいくSFマンガです。物語の説明は最小限で、世界観もすぐには親切に教えてくれません。それでもページをめくる手が止まりにくいのは、都市そのものの圧倒的な存在感があるからです。読者は霧亥と同じく、状況を完全には理解しないまま、この世界の危険さと広大さを身体で受け取ることになります。

本作の特徴は、セリフや情報量で引っ張るのではなく、空間の異様さで読ませることです。果てのない階層、無機質な壁面、巨大すぎて全体像の見えない建造物。そこを歩く霧亥の小ささが、世界の広さと絶望を際立たせます。1巻はシリーズ全体の入口として、その空気を強烈に焼きつける巻です。

読みどころ

最大の読みどころは、建築そのものが物語になっている点です。普通のSFが設定や事件で引っ張るのに対し、『BLAME!』は「この場所は何なのか」という感覚が先に来ます。道を進むこと自体が冒険であり、空間を理解できないこと自体が恐怖になる。この読み味はかなり独特で、他の漫画ではなかなか代わりがありません。

また、霧亥という主人公の無口さも効いています。多くを説明しないので、感情移入しやすい主人公ではないかもしれません。けれど、その無口さが逆に世界の冷たさと合っています。何を考えているのか完全には見えないからこそ、わずかな行動や視線の変化に意味が生まれ、読者も自然と彼の旅を追いたくなります。

シボとの出会いも重要です。荒廃した世界の中で、他者との接触がわずかに物語の温度を変えます。とはいえ、人情話へ寄りすぎるわけではなく、あくまで世界の厳しさが先にある。その中でほんの少し差し込む人間らしさが、かえって強く印象に残ります。

戦闘描写も派手な必殺技マンガとは違い、空間の圧力の中に組み込まれています。敵と戦っているというより、世界そのものに拒絶されている感覚が強いです。この「都市が敵でもある」感じが、本作をただのサイバーパンク作品で終わらせません。

そして、情報を絞っているからこそ再読の面白さも大きいです。初読では圧倒されるだけだった場面が、少し設定を理解したあとに読み返すと、人物の立ち位置や危険の質が違って見えてきます。読者の理解が追いつくほど、世界の不気味さも広がっていく構造になっているのが見事です。

類書との比較

『AKIRA』や『攻殻機動隊』のような代表的SFマンガと比べても、『BLAME!』はかなり異質です。政治や社会システムの説明より、空間と身体の感覚に重心があるからです。世界観を理解するより先に、世界に圧倒される。そこが本作ならではの魅力です。

また、セリフの少なさや情報の絞り方は、人を選ぶ一方で強い没入感を生みます。親切な解説が多いSFでは物足りない人、逆に説明されすぎると冷める人には、とても相性がいいと思います。絵で世界を読ませるタイプの作品として非常に完成度が高いです。

加えて、1巻の時点では世界のルールが断片的にしか見えないため、読者自身が「この都市では何が起きているのか」を推測しながら進むことになります。この能動的な読書感も本作の魅力です。受け身で読むより、絵の細部や登場物の配置を拾いながら読むほど面白さが増していきます。

こんな人におすすめ

  • 世界観に圧倒されるタイプのSFマンガを読みたい人
  • セリフより絵と空間で語る作品が好きな人
  • 退廃した巨大都市のビジュアルに惹かれる人
  • 説明の少ない作品を自分で読み解くのが好きな人

感想

読んだあとに残るのは、ストーリーの整理よりも空間の感触です。冷たい壁、遠すぎる天井、どこまで続くかわからない階段。そうした景色が、音のない悪夢のように頭へ残ります。これが本作の強さだと思います。

わかりやすい親切さはありませんが、その不親切さが魅力でもあります。すべてを説明しないからこそ、世界の大きさと孤独がそのまま届く。1巻の段階で「この先をもっと見たい」と強く思わせる、かなり異質で強い導入巻でした。

SFマンガとしても、アクションマンガとしても、そして「空間を読む作品」としても非常に印象が強いです。読者にやさしくはないのに、読む体験そのものが忘れがたい。説明過多な作品に少し飽きている人ほど、この巻の無言の迫力に引き込まれると思います。

物語を理解することより、まず世界に浸ることが先に来るタイプの作品なので、読む姿勢そのものを変えてくれる1巻でもあります。整理された設定資料のような親切さはありませんが、だからこそ唯一無二の読後感があります。SFマンガの幅を広げたい人には、入口としても強くすすめられる巻です。

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    佐々木 健太

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