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レビュー

概要

『メイドインアビス』1巻は、巨大な縦穴「アビス」をめぐる探窟の世界で、少女リコと謎の少年レグが出会い、底知れない深淵へ向かう物語の入口です。かわいらしい絵柄からは穏やかな冒険譚を想像しがちですが、読み始めるとすぐに、この作品の本質が「未知への憧れ」と「取り返しのつかない危険」の両立にあるとわかります。

アビスは単なるダンジョンではありません。深く潜るほど帰還が難しくなり、上昇負荷という形で身体そのものが代償を払う世界です。1巻の時点ではまだ本格的な地獄は始まっていませんが、ルールの説明だけで十分に怖い。それでもリコが下を目指すのは、母への思慕と探窟への憧れがあるからで、この「怖いのに行きたい」という気持ちが作品全体の推進力になっています。

読みどころ

最大の読みどころは、アビスの世界設定の密度です。遺物、探窟家の階級、生息する生物、地形、上昇負荷の仕組みが、無理のない量でどんどん差し込まれます。読者は物語を追うだけでなく、自然と「この世界では何が危険で、何が価値なのか」を学んでいく。設定を知ること自体が快感になる漫画です。

リコの主人公性もかなりいいです。戦闘力の高いヒーローではなく、知識と好奇心で前へ進むタイプなので、世界の魅力がよく見えます。危険なものを怖がる一方で、未知を前にすると目を輝かせる。その反応が素直だから、読者も一緒にアビスへ惹き込まれます。無謀さと聡明さの両方を持った主人公として、1巻の時点でかなり魅力的です。

レグの存在も重要です。人間ではないらしいのに、どこか人間的で、圧倒的な力を持ちながら自分の来歴を知らない。リコの外向きの好奇心に対して、レグは内向きの謎そのものです。この2人が並ぶことで、物語には「世界の底を知りたい」というベクトルと、「自分は何者なのかを知りたい」というベクトルが同時に生まれます。導入として非常に強い組み合わせです。

また、1巻の時点ですでに「かわいさ」と「残酷さ」の距離が異様に近いのも特徴です。子どもっぽい会話や柔らかいデザインのすぐ隣に、生物の危険性や人体へのダメージが置かれる。このギャップがただの刺激ではなく、アビスという世界の容赦なさを伝えます。読者は安心して冒険を楽しめず、常に何か悪いことが起こりそうだと感じ続ける。この緊張感が独特です。

類書との比較

ファンタジー漫画には壮大な世界観を持つ作品が多いですが、『メイドインアビス』は「下へ行くほど世界が閉じていく」のが特徴です。旅先が広がっていくのではなく、戻れない方向へ深く潜っていく。そのため冒険の高揚感が、常に喪失の予感とセットになっています。この感覚はかなり珍しいです。

さらに、ダークファンタジーとして見ても、残酷な展開だけで驚かせるタイプの作品ではありません。恐ろしさの大半が世界のルールそのものから来るため、理不尽さより必然として怖くなります。だから、1巻の時点でまだ本格的な惨事が少なくても、先へ進むこと自体が十分に恐ろしく感じられます。

こんな人におすすめ

  • 緻密な世界設定を味わえるファンタジー漫画が好きな人
  • 可愛い絵柄と重い世界観のギャップに惹かれる人
  • 冒険ものでも、未知への憧れと恐怖が両立している作品を読みたい人
  • 一度入ると抜け出しにくい強い没入感を求める人

感想

この1巻を読むと、アビスという場所が単に危険なだけでなく、どうしようもなく魅力的に見えてしまうのがよくわかります。リコが下を目指す理由も、読者が続きを読みたくなる理由も同じで、「怖いけれど見たい」からです。この感情をここまできれいに作れる作品はあまりありません。

印象に残るのは、リコとレグが出会ってからの空気の変化です。最初は好奇心が勝っているのに、読み進めるほど、2人の旅には必ず大きな代償があるとわかってくる。だから1巻の明るさや可愛さが、そのまま不穏さにもつながります。この二重の読み味が本作の魅力です。

設定好きにも、物語の引きが強い漫画を探している人にも勧めやすい1巻です。かわいい冒険漫画だと思って読むと驚きますし、残酷さだけを期待しても違います。未知の世界に惹かれる感情そのものを描いた導入巻として、かなり完成度が高いと思います。

一度読み始めると、アビスの底が見えるまでは降り続けたくなるタイプの1巻です。

冒険の高揚感と恐怖がここまで同時に立ち上がる導入巻は、やはりかなり珍しいです。

世界観重視で漫画を選ぶ人には、かなり相性のいい導入だと思います。

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    佐々木 健太

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