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レビュー

概要

『高台家の人々』1巻は、妄想が趣味の地味めなOL・平野木絵(きえ)と、イケメン社員・高台光正(みつまさ)の出会いから始まるラブコメです。
ただし、普通の恋愛漫画ではありません。光正は人の心が読めるテレパス。木絵は妄想力が強すぎる。つまり「心が読める側」と「心の中がうるさすぎる側」が出会ってしまう話です。

この設定だけでコメディが成立するのに、1巻はそこに“人間関係の優しさ”も乗せてきます。テレパスって便利そうに見えるけれど、他人の本音が常に入ってくるのはしんどい。木絵の妄想は変だけど、どこか人を傷つけない。だから光正は惹かれていく。導入としてすごく筋が通っています。

読みどころ

1) 木絵の妄想が、ただのギャグではなく“救い”になる

妄想は逃避にも見えます。でも木絵の妄想は、現実を受け止めるためのクッションにもなっています。
他人の目が気になる場面でも、頭の中で別の物語を走らせて、自分を保つ。だから読んでいて、笑えるのに、どこか切ないです。

2) 光正のテレパスが、恋愛のズルさにならない

心が読めると、恋愛は無敵になりそうです。でも光正は、むしろ慎重になります。
本音が分かるからこそ、踏み込み方が難しい。相手の嫌がるポイントも見えてしまう。1巻は、テレパスが“能力”であると同時に“弱点”でもあることを見せてきます。

3) 価値観の違いが、きれいごとに回収されない

木絵は地味で、華やかな教養や品格を持つタイプではありません。
でも、人の目を気にして縮むだけでもない。光正側にも家の論理があり、木絵側にも生活の論理がある。そのズレが、笑いと緊張の両方になります。

1巻の魅力(「好き」の理由が、すごく納得できる)

光正が木絵に惹かれるのは、妄想が面白いからだけではありません。
心を読む能力があるからこそ、木絵の優しさや、変さの奥にある誠実さが見えてしまう。木絵の妄想は騒がしいのに、悪意は薄い。その“人柄”が、恋の理由として成立します。

一方で木絵は、光正の顔や肩書きだけに惹かれるわけではありません。テレパスという異質さを知っても、怖がりきらずに関わろうとする。
この相互理解の速度が、1巻の読みやすさになっています。

恋愛としての刺さり方(本音が読めると、むしろ不安が増える)

テレパスの設定が効いてくるのは、「相手の気持ちが分かって安心」ではなく、「分かるからこそ怖い」方向です。
人の心には、表の顔と裏の顔があります。好意の裏にある軽い見下し、優しさの裏にある面倒くささ。そういうノイズまで読めてしまうと、人を信じるのが難しくなる。

光正が慎重になるのは、そのノイズを知っているからです。だから、木絵の妄想の“無害さ”が効いてくる。
妄想は変だけど、誰かを攻撃する方向へ行かない。むしろ自分の中で処理している。そういう人が目の前に現れたら、テレパスの人ほど救われるんだろうな、と思わされます。

木絵側も、光正の能力を知って終わりではありません。読まれることは怖い。でも同時に、読まれても嫌われない体験ができると、人は少しずつ変わる。
1巻は、恋愛が始まる瞬間の“怖さ”と“嬉しさ”を、設定の面白さで紛れさせず、きちんと描いているのが良いです。

こんな人におすすめ

  • ラブコメが好きで、設定の面白さも欲しい人
  • ギャグだけじゃなく、優しさの余韻も残る作品が好きな人
  • 他人の本音に疲れたことがある人

感想

1巻を読んで思うのは、木絵の妄想が“痛さ”だけで描かれていないことです。笑えるのに、木絵が嫌いにならない。むしろ応援したくなる。
光正のテレパスも、恋愛の便利ツールではなく、繊細さを生む設定として機能しています。だから、コメディが強いのに、人物がちゃんと残ります。

「人の心が読めたら楽だろうな」と思ったことがある人ほど、この作品の逆転が刺さるはずです。読めるからこそ苦しい。読めないからこそ救われる。
1巻は、その面白さをいちばんきれいに体験できる入口でした。

ラブコメとして軽く読めるのに、読後に「人と付き合うって難しいよね」が残る。その後味が好きです。

木絵の妄想は、見方を変えると「相手を勝手に決めつけない」優しさにも見えます。現実の他人に踏み込みすぎず、頭の中で完結させているからこそ、光正にとっては安全な場所になる。
変な設定のはずなのに、人間関係の話として腑に落ちる。そこが、この作品の強さだと思います。

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    佐々木 健太

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