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レビュー

概要

『施設がそんなにダメですか? ~認知症になった祖母の地獄の在宅介護~』は、認知症介護をめぐるきれいごとを外し、家族が現実にどこで追い詰められるのかを率直に書いた本です。タイトルからしてかなり強いですが、その強さは話題づくりのためだけではなく、在宅介護をめぐる罪悪感と無理の構造を可視化するために使われています。介護を知らない人には刺激的に見えるかもしれませんが、当事者に近いほど「わかる」と感じやすい種類の本です。

本書の軸にあるのは、「家族が最後まで家でみるべきだ」という空気への疑問です。介護は愛情の深さだけで乗り切れるものではなく、体力、時間、仕事、お金、家族関係の全部に影響します。そこを無視して美談だけで語ると、いちばん苦しい人が助けを求めにくくなります。本書は、その危うさをあえて遠慮のない言葉で突いてくるので、読む側も中途半端な理想論へ逃げにくくなります。

この本の読みどころ

読みどころは、施設入所を「冷たい選択」と決めつける見方を崩してくれるところです。認知症介護では、本人の状態だけでなく、介護する側の生活も崩れやすい。本書は、家族が壊れてからでは遅いという当たり前の事実を、かなり具体的な温度で思い出させます。頑張れるだけ頑張る、で止まらず、どこで助けを借りるべきかを考える視点が得られます。

また、介護のつらさを「心が狭いから」「もっと優しくできるはずだから」と個人の人格問題にしないのも大きいです。疲れる、腹が立つ、逃げたくなる、罪悪感が出る。その全部を、介護の現場では起こりうる普通の反応として扱っています。ここがあるだけで、読者は自分を責めすぎずに済みます。介護本の中には道徳的な圧が強いものもありますが、本書はむしろその圧力を外す方向に働きます。

さらに、制度の細部を教える教科書というより、介護観そのものを組み替える本として読めるのも良いところです。施設、在宅、デイサービス、家族の役割分担といった言葉を「正解探し」で見るのではなく、暮らしを回すための選択肢として捉え直す。その視点があると、介護の話が少しだけ現実的になります。

類書と比べた強み

介護本には、制度解説に特化したもの、家族の感動記に寄ったもの、専門職向けの実務書などがあります。本書はそのどれかに完全には収まらず、「感情の現場」と「社会の構造」をつなぐ位置にあるのが強みです。制度を細かく知りたいだけなら別の本が必要ですが、介護に向き合う前提を整える本としてはかなり効きます。

本書の強みは、きれいにまとめすぎない点です。介護本には、最後を前向きな気持ちで閉じるものもあります。ですが、本書が残すのは簡単に片づかない現実です。だからこそ、読み終わったあとに「自分ならどうするか」が本気で頭に残ります。

介護の本を読む意味は、理想の家族像に近づくことだけではありません。必要なのは、限界が来る地点、相談先、施設や外部サービスの捉え方をあらかじめ言葉にしておくことです。本書はその準備をかなり生々しい形で促してくれるので、読後に家族と話し合うきっかけを作りやすい本だと感じました。

もう少し踏み込んで言えば、この本は「介護を頑張る人」を励ます本である以上に、「介護を頑張りすぎないための本」です。手放すこと、任せること、施設を選ぶことを、愛情不足ではなく判断の一部として見直せるようになる。この視点があるだけで、介護をめぐる会話はかなり変わるはずです。

こんな人におすすめ

親の介護が現実味を帯びてきた人、認知症介護に漠然と不安がある人、すでに家族介護で疲れている人に向いています。特に、施設に頼ることへ罪悪感がある人や、周囲の「家でみるべき」という空気に苦しんでいる人には刺さるはずです。逆に、介護保険制度の手続きを一冊で網羅したい人には少し方向が違います。本書は手順の本ではなく、介護をどう考えるかの本だからです。

感想

読んでいて強く感じたのは、介護をめぐる残酷さは病気そのものだけでなく、「家族ならできるはず」という無言の期待にもあるということでした。本書は、その期待がどれだけ人を追い詰めるかを見せてくれます。そのうえで、施設を選ぶことも、距離を取ることも、助けを求めることも逃げではないと伝えてくれるので、読後に少しだけ呼吸がしやすくなります。

介護を美しく語らない本は、人によってはきつく感じるかもしれません。ただ、現実がきついからこそ、こういう本が必要です。親の介護や認知症の問題へ向き合う前に読んでおくと、「頑張ること」以外の選択肢が見えやすくなります。家族全体を守る視点を持つための一冊でした。

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    佐々木 健太

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