レビュー
概要
『かんたんたのしい親子体操』は、親子で一緒に体を動かす遊びを、現場向けに分かりやすくまとめた実践書です。CiNii Books の内容紹介では、子どもたちが「おとうさんやおかあさんの大きなおしりの細道をとおったり、おイモやたけのこになったり」しながら、親子で楽しむ体操に大喜びする様子が紹介されています。つまり本書は、きれいなフォームを競う体操本ではなく、親子のふれあいを通して身体を動かす遊びの本です。
総合体育研究所の公式ページでも、この本は実際の体育指導の現場で特に先生方や保護者に人気のあった親子体操を集めたものだと説明されています。しかも準備体操から親子で遊べる小集団ゲームまで、33種類を1冊にまとめている。机上の理論より、現場で実際に子どもが笑うかどうかを大事にしている本だと分かります。
本の具体的な内容
CiNii の目次によると、本書は4章構成です。第1章「やってみよう!親子体操」では、「ながーい足になれ」「足踏みゲーム」など、まず親子で身体を動かす入口になる体操が並びます。ここは、運動習慣のない家庭でも始めやすい導入として機能しています。いきなり難しい動きをさせるのでなく、親子で笑いながら身体を使う感覚をつくる章です。
第2章は「ゲーム感覚の親子体操」。ここには「親子のきずな」や「L字たおし」といった名前が見えます。名前の段階ですでに、単なる筋力づくりではないことが伝わります。親子で支え合う、タイミングを合わせる、相手の重さや動きに反応する。そうした関係性が遊びの中に組み込まれているのが、この本の特徴です。親と子が同じ方向を向いて一緒にやるので、運動そのものがコミュニケーションになります。
第3章「道具をつかった親子体操」では、ボールキャッチやボールの散歩など、道具を介した遊びが入ります。親子体操は、何もない空間でできる動きだけだと単調になりがちですが、道具が入ることで視線や手の使い方、距離感が変わります。子どもは道具があるだけで気分が上がりますし、親にとっても遊びのバリエーションを広げやすい。本書がそこを押さえているのは実用的です。
第4章は「親子対抗みんなであそぼう」。ここでは「紙袋子どもあてゲーム」「おしりでとおりゃんせ」など、複数の親子で楽しめる内容まで含まれます。家庭内のふれあいだけに閉じず、保育の現場やイベントでも使える構成になっているわけです。総合体育研究所の公式説明でも、「親子で遊べる小集団ゲーム」まで収録している点が強調されており、家庭向けと集団向けの両面を持つ本だと分かります。
また、公式ページには「一ページに一種目を基本として、行ない方・ポイントをかわいいイラストと一緒にわかりやすく説明している」とあります。この形式はかなり大事です。親子向けの運動本は、読むのに手間がかかるとそのまま閉じられてしまいます。本書は一種目ずつ独立しているので、気になったところからすぐ試せる。保護者や先生に使いやすい作りです。
内容紹介の文章にある「おイモやたけのこ」「小鳥」といった言葉からも分かるように、本書は子どものイメージ遊びと身体活動を結びつけています。幼い子どもは、筋トレのような目的だけでは動きません。何かになりきる、くぐる、ぶつかる、支える、逃げるといった遊びのなかでこそ体を使います。本書はその発達段階をよく踏まえています。
さらに構成を見ると、最初はその場でできる単純な動きから入り、次に親子で息を合わせる遊び、道具を使う遊び、複数組で盛り上がる遊びへと広がっていきます。この流れがあるので、いきなり大人数の場で使う必要はありません。家で一対一の遊びから始め、子どもが慣れてきたら友だち家族と一緒にやる、と段階的に広げやすい。実践書としての設計がかなり丁寧です。
親子体操の本で見落とされがちなのは、子どもの運動能力そのものより、親がどう関わるかです。本書の種目名や章立てからは、正しく指導することより、相手の様子を見ながら合わせることが重視されているのが伝わります。親が主役になるのではなく、子どもの反応に合わせて遊び方を調整する。その姿勢が本の全体に通っている点も好印象でした。
だからこの本は、親が子どもに運動を教える本というより、一緒に体を使って遊ぶための本として読むほうがしっくりきます。親子で同じ動きを共有すること自体が楽しく、運動能力やリズム感、身体感覚はその結果として育っていく。そうした順番がきちんと守られているのが良いところです。
類書との比較
家庭向けの運動本には、体力づくりや発達促進を前面に出すものも多いですが、本書はもっと遊び寄りです。しかも、ただ遊ぶだけでなく、現場で実際に人気のあった種目を整理し、一ページ一種目で使いやすくしている。保育や親子イベントでそのまま使いやすいのが強みです。
こんな人におすすめ
- 家で子どもと一緒に体を動かしたい親
- 保育士や幼児体育の指導者
- 親子イベントや参観日で、すぐ使える運動遊びを探している人
感想
この本の良さは、「運動しなきゃ」という義務感を前に出さないことです。親子で楽しいから動く、その結果として身体を使う経験が増える。幼児向けの本として、とても自然な設計だと思いました。
特にいいのは、家庭でも集団でも使えることです。家ならその日の気分で一種目だけ試せますし、園やイベントなら章ごとにまとめて使える。親子の関係をあたためながら身体も動かせるので、単なるレクリエーション集以上の価値がある一冊だと感じました。