『退屈なことはPythonにやらせよう 第2版 ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング』レビュー
著者: Al Sweigart 、相川 愛三
出版社: オライリー・ジャパン
著者: Al Sweigart 、相川 愛三
出版社: オライリー・ジャパン
『退屈なことはPythonにやらせよう 第2版』は、Pythonを「学ぶため」に読む本というより、「日常業務の面倒を減らすため」に読む本です。特徴は、自動化の対象が具体的なところにあります。WordやExcel、PDFの一括処理、Webからのダウンロード、メールやSMSの送受信、画像処理、GUI操作など、仕事で遭遇しやすい“退屈な作業”を、モジュールを使って手早く片付ける流れがはっきりしています。
第2版では、GmailやGoogleスプレッドシートの操作が増補され、Pythonや周辺モジュールの更新にも追随しています。自動化の本は、環境差分で詰まりやすいので、このアップデートは価値があります。
本書は大きく複数部で構成され、最初に基礎を固めてから、自動化の定番テーマへ進みます。
「基礎が終わったら、すぐに使える道具が増えていく」構成なので、途中から“欲しい章だけ読む”運用もしやすいです。
正規表現は、説明を読んでも使えるようになりにくい分野です。本書は、電話番号と電子メールアドレスを抽出するプロジェクトを置き、実務で起きる「テキストが汚い」状況へ寄せます。パターンを作るだけでなく、抽出した結果をどう扱うかまで含めて理解できます。
自動化の現場では、社内システムだけで完結しません。Webからのダウンロードが必要になることがあります。12章では、requestsでページを取り、HTMLを読み、必要なものだけ抜く流れを段階で追えます。Webコミックのダウンローダーのように、対象を見つけて保存するプロジェクトもあり、手を動かすと作業の型が残ります。
Pythonで仕事をするうえで避けづらいのが、ExcelとPDFです。13章では、OpenPyXLを使ったExcelの読み書きが入り、スプレッドシートからデータを読み込む、更新するといったプロジェクトで実務に繋がります。15章はPDFとWordで、テキスト抽出、暗号解除、結合、招待状の生成、WordからPDF生成など、現場で“やりたくなる”処理が並びます。
自動化は「作る」だけでは終わりません。運用には通知が必要です。18章では、Gmail APIで送受信や検索を扱い、さらにTwilioでSMSを送る流れも登場します。会費のリマインダーを送るプロジェクトなど、業務の最後の一手を詰める感覚が出ます。
自作スクリプトを周囲へ渡すときに詰まりやすいのは、「相手のPCにPython環境がない」という点です。日本語版オリジナルの付録では、PyInstallerによる実行ファイル作成を扱います。自動化を“個人の小技”で終わらせず、チームで使える道具へ寄せる導線が用意されています。
この本を読んで良かったのは、自動化を「万能の近道」として売らないところです。むしろ、退屈な作業を具体的に列挙し、処理を小さな部品へ分解し、モジュールの力を借りて組み上げる。現実的な道筋を示します。
読み進めるほど、「自分の職場の退屈はどこにあるか」を探す目が育ちます。Excelの集計、PDFの結合、Webからの取得、メールの定型送信。小さな改善でも、毎日繰り返すなら効果は大きい。本書は、その“効くところ”に手が届く作りになっています。
最初の一歩としては、Excel(13章)かPDFとWord(15章)から試すと成果が出やすいです。