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レビュー

概要

『子どもがまっすぐ育つ 言葉かけ大全』は、親や教師が子どもへ向ける言葉を、気分や経験則で選ぶのではなく、技法として整理して学べる本です。著者の三好真史さんは小学校教師であり、メンタル心理カウンセラーでもあります。フォレスト出版の紹介では、本書を「子どもを育てるための言葉を集めた辞典のような本」と位置づけていて、声かけを場当たり的なものではなく、再現可能なスキルとして扱っています。

この本の特徴は、言葉かけをふんわりしたコミュニケーション論で終わらせないことです。カウンセリング、コーチング、アドラー心理学、応用行動分析、交流分析、ペップトークなどの観点から理論化しています。さらに、実際に使える形へ落とし込んでいます。子育て本というより、教育現場の実践知を家庭向けに翻訳した一冊です。そう捉えると分かりやすいです。

本の具体的な内容

本書では、子どもへの言葉かけを5種類に分類しています。「ほめ言葉」「叱り言葉」「問いかけ言葉」「はげまし言葉」「挑発言葉」です。そして、それぞれの種類について10の技法が紹介され、合計50の技法として整理されています。この全体設計がまず見事です。子どもとの会話で困るのは、「褒めればいいのか、叱るべきか、見守るべきか」が場面によって違うからです。本書はその迷いを分類の段階で減らしてくれます。

第1章では、言葉かけの心構えが語られます。フォレスト出版の紹介によれば、ここでは「言葉かけは心の水やり」「子どもの成長を左右する言葉かけ」「厳しさと優しさをあわせ持つ」「言葉かけのバリエーションをもつ」といったテーマが並びます。つまり、テクニックだけでなく、その前提にある姿勢を確認してから各論へ進む構成です。ここを読むと、言葉かけは一発で子どもを変える魔法ではなく、毎日積み上がっていく関係の土台だと分かります。

第2章の「ほめ言葉の技法」では、たとえば「驚き法」「やり過ぎ法」「意見法」「ますます法」「価値づけ法」「伝聞法」「お手本法」「感謝法」「尊敬法」「うれしいたとえ法」などが並びます。しかも、なかなかお手伝いができないとき、テストの結果が悪いとき、柔道の試合で勝ったとき、トイレのスリッパを揃えないときといったケースに紐づいている。だから、ただ褒めればよいのではなく、どんな場面で、どういうニュアンスの言葉が有効なのかが具体的に見えてきます。

第3章の「叱り言葉の技法」も面白いです。泣いてダダをこねるとき、銭湯で遊んでしまうとき、よくない言葉を使うとき、宿題をごまかすとき、朝寝坊が続くときなど、親にとって本当に困る場面が並びます。そして「無視法」「取り上げ法」「さっぱり否定法」「怒責法」「理詰め法」「過剰修正法」「忠言法」「落胆法」「大事法」「依頼法」といった技法が紹介されます。ここで重要なのは一点です。叱ることを感情爆発としてではなく、目的を持った介入として整理していることです。

第4章の「問いかけ言葉」と第5章の「はげまし言葉」に入ると、本書はさらに実用的になります。習い事に意欲的でないとき、食器が汚れたまま流しに置かれているとき、家の中の物が壊れるとき、学校に行きたがらないとき、友達と仲良くできず落ち込んでいるとき、受験当日に不安を感じているときなど、状況に応じて「選択法」「想像法」「ゴール法」「受け止め法」「視点かえ法」「肯定法」「応援法」などが使い分けられます。言葉によって子どもの認知や行動の向きを変えるという、本書の本質が最もよく出ている部分です。

さらに珍しいのが、第6章の「挑発言葉の技法」です。勉強に飽きているとき、準備が遅いとき、学校のプリントを提出しないとき、片づけを手伝わないときなどに対して、「言いかけ法」「とぼけ法」「制止法」「ため息法」「基準法」「当然法」「変なたとえ法」「きりあげ法」「指名法」「代表者法」が紹介されます。タイトルだけ見ると刺激が強いですが、要は子どもの注意を動かしたり、自発性を引き出したりするための逆説的な声かけです。ここを独立章にしているのがこの本のユニークさだと思います。

本書は、読むだけでは足りず実践して初めて力になる、と繰り返し伝えています。この態度も信頼できます。言葉かけは「知っている」と「その場で出る」の間に大きな差があるからです。その意味で、本書は読み物というより練習帳に近い。ケーススタディとチェックリストを通じて、自分が得意な技法と使えていない技法を見つけられる構成になっています。

こんな人におすすめ

  • 子どもをどう褒め、どう叱り、どう励ますかで迷いやすい保護者
  • 学校や塾、保育現場で言葉かけの引き出しを増やしたい人
  • 子どもの自己肯定感や主体性を、日々の会話から支えたい人

類書との比較

子育て本には、「自己肯定感を育てよう」と理念を語る本と、個別場面の対処法を並べる本があります。本書はその両方をうまくつないでいます。理念だけで終わらず、場面別の言い方に落ちている。しかも、褒める・叱る・問いかける・励ます・挑発するという分類が明快なので、後から見返しやすいです。教育現場の技術書としても、家庭向けの実用書としても使い勝手が良い一冊です。

感想

この本の良さは、親の言葉を「性格」ではなく「技術」として扱っているところです。子どもへの声かけがうまい人も、もともと優しいとか、話し方が柔らかいとか、そういう資質だけで支えているわけではありません。本書を読むと、言葉の順番や切り口には明確な型があると分かります。

特に印象に残ったのは、叱る言葉ですら複数の技法として整理している点でした。感情任せに怒るのではなく、何を目的にどの言葉を選ぶかを考える。この視点が入るだけで、子どもとの会話はかなり変わるはずです。読むだけで劇的に変わる本ではありませんが、毎日少しずつ真似していくと効いてくるタイプの良書だと感じました。

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