レビュー
概要
『記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術』は、暗記を根性論から切り離して、技術として扱う本です。著者は青木健さん。記憶競技のトップレベルで磨いた方法を、受験や仕事にも転用できる形でかなりわかりやすく解説しています。
この本の核にあるのは、丸暗記ではなく「記憶しやすい形へ変換する」発想です。言葉を絵にする、数字をイメージへ置き換える、場所やストーリーと結びつける。やっていることはシンプルですが、実際に手順として示されると、暗記の苦手意識がかなり薄れます。
読みどころ
- いちばん実用的なのは、連想と場所を組み合わせる基本技法です。覚えたいものをそのまま頭へ押し込むのではなく、見える形へ変えて、既存の空間や物語へ置く。この流れが具体例つきで示されるので、初めてでも再現しやすいです。
- 数字や固有名詞の扱い方も面白いところです。人名、年号、買い物リスト、プレゼン項目など、覚えたい対象ごとに変換の仕方を変える必要があります。本書はそこを競技レベルの技法から日常向けへ下ろしていて、使いどころがイメージしやすいです。
- また、本書は「覚え方」だけでなく、「どう練習するか」にも触れています。少しずつ負荷を上げること、同じ方法を何度か回して身体化すること、生活習慣を整えること。この本は一発芸で終わらせず、記憶しやすい状態づくりへ話を進めます。そこが実用的です。
- 受験勉強だけでなく、会議の論点整理、営業先の情報把握、スピーチの構成記憶など、社会人の用途にもつながる本です。単なる受験テクニック本より射程が広く、記憶力を「使う力」として扱っている印象があります。
- さらに、記憶術を怪しい特殊能力としてではなく、だれでも練習可能な型として見せてくれる点も安心感があります。できる人だけの芸ではなく、やり方を知れば伸ばせるという感覚を持てる本です。
- 本書は、イメージ化が苦手な人に対しても「どう置き換えればいいか」を具体例で見せてくれます。抽象語を絵へ変える、数字に意味を与える、順番を物語にする。この変換作業が見えるので、読みながらすぐ試しやすいです。
類書との比較
記憶に関する本には、脳科学寄りで理論を厚く説明するものと、受験テクニックだけに絞るものがあります。本書はその中間にあって、理屈を最低限押さえつつ、すぐに手を動かせる実践へつなげるのがうまいです。
また、場所法やイメージ法だけを個別に扱う本と違って、本書は「どの場面でどの方法を使うか」まで含めて整理しています。そのため、読んで終わりになりにくく、生活や学習に持ち込みやすいです。
競技者の本というと難しそうに見えますが、実際にはかなり親切な入門書です。記憶術の世界をのぞきながら、日常で使える範囲まで落としてくれる点で、広く勧めやすい一冊でした。
また、脳科学の話だけで終わらないのも助かります。理屈は最低限にして、実践へ重心を置いているので、知識を増やすより先に手を動かしたい人に合います。
こんな人におすすめ
- 暗記が苦手で、やり方から見直したい受験生
- 人名、数字、話の流れを覚える必要がある社会人
- 記憶術を一発芸ではなく習慣として使いたい人
- 競技レベルの方法を日常向けに知りたい人
感想
この本を読んでよかったのは、記憶力を才能ではなく設計の問題として見られるようになったことでした。覚えられないのは能力不足ではなく、覚えにくい形のまま扱っているだけかもしれない。そう思えるだけで、学習への抵抗感がかなり減ります。
実際に役立つのは、派手な記録術そのものより、「イメージ化して置く」「順番をつくる」「反復する」という基本です。仕事や勉強で情報量が増えた人ほど、この基本の強さを感じやすいはずです。
記憶力を底上げしたい人にとって、かなり入りやすい本でした。理論だけでも、精神論だけでもないので、今日から試せる暗記の型を探している人には向いています。
暗記が苦手な人ほど、「覚えられない自分」を責める前に本書の方法を一度試す価値があります。方法が変わるだけで、記憶の負担感はかなり変わると感じさせてくれる本でした。
受験、資格勉強、仕事のインプットが重なっている人には、とくに相性がいいと思います。覚え方の手札が増えるだけで、学習全体のストレスがかなり下がると実感しやすい本でした。
記憶力を上げたいというより、覚える作業を少し楽にしたい人にも向いています。気合いより方法を変えたい人にとって、かなり実務的な助けになる本です。