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レビュー

概要

『1日3分見るだけで認知症が予防できるドリル 脳知覚トレーニング28問』は、計算や漢字の反復ではなく、「見る力」と「見て判断する力」を使って脳を刺激するタイプの脳トレ本だ。著者は眼科医の平松類。視覚と認知機能のつながりに注目し、短時間でも続けやすい形で問題を配置している。

タイトルどおり、一日数分で取り組めるのが大きな特徴だ。ただし、内容は単なる暇つぶしのパズル集ではない。似た図形や模様の違いを見分けたり、視線を動かしながら情報を追ったり、全体と部分を切り替えて把握したりと、「見えているつもり」を少し丁寧に鍛える問題が中心になっている。高齢者本人が使うだけでなく、家族が一緒に取り組みやすい作りなのも実用的だ。

読みどころ

読みどころは、問題の切り口がかなり「視覚寄り」なことだ。一般的な脳トレ本だと計算、しりとり、漢字、迷路といった問題が並びやすいが、本書は図形や模様、色の違い、視野の広がり、見落としやすい箇所への注意などに焦点を当てる。そのため、数字や文字が苦手でも入りやすいし、「脳を鍛える」といっても身構えずに始めやすい。

また、問題数が28問に絞られていて、やり切れる量に設計されているのも良い。こうした予防本では、正しさ以上に継続のしやすさが大事になる。本書は一問一問が長すぎず、「今日はここまで」と区切りやすいので、毎日の習慣にしやすい。短時間で終わるからこそ、高齢の家族にも勧めやすい。

さらに、視力や目の使い方を意識させる入り口にもなっている点が面白い。ただ問題を解いて終わりではなく、目の疲れ、見えづらさ、注意の散りやすさといった日常の感覚を振り返るきっかけになる。認知症予防という大きなテーマを掲げつつも、まずは「見て判断する力を衰えさせない」ことに着地しているので、押しつけがましさがない。

問題のタイプが偏りすぎていないのも続けやすさにつながっている。見分ける、探す、追う、覚えるといった作業がほどよく混ざっているので、単調さが出にくい。高齢者向けドリルは「幼く見える」ことが壁になる場合もあるが、本書は大人が取り組んでも違和感のない紙面で、その点でも勧めやすい。

類書との比較

多くの認知症予防本は、生活習慣の改善や会話、運動、計算ドリルの重要性を説く。本書はそこに対して、「見ること」そのものを主役にしているのが特徴だ。つまり、頭の中で答えを出す前段階にある視覚入力の質に注目している。ここが他の脳トレ本といちばん違う。

また、専門的すぎる眼科本とも違って、読者は医学知識を前提にしなくていい。理論を延々と読む本ではなく、手を動かして試しながら理解する形式なので、難しい解説本が苦手な人にも向いている。家族で共有しやすいのも、この本ならではだ。

計算ドリル中心の本だと、途中で「勉強させられている」と感じやすい。本書はその負担が比較的少ない。見て探すという動作は負担感が低く、それでも集中力はしっかり使う。このバランスが良い。とくに、学習習慣のない高齢者でも導入しやすい脳トレとして価値がある。

こんな人におすすめ

  • 認知症予防に何か始めたいが、難しい習慣は続かなかった人
  • 親や祖父母に負担の少ない脳トレを探している家族
  • 視力の衰えと物忘れの関係が気になっている人
  • 数字や文字のドリルより、図を見る問題のほうが取り組みやすい人

感想

この本を読んで感じたのは、認知症予防を「壮大な努力」ではなく「小さな日課」に戻してくれることだ。予防と聞けば、運動や食事、会話、睡眠まで視野に入って気後れしやすい。本書はまず1日3分、目と脳を働かせるところから始めればいいと示してくれる。その小ささが強い。

高齢の家族に何か勧めるとき、難しすぎるものは続かない。子ども扱いされているように感じるものも受け入れられにくい。

本書の問題は見た目がほどよく軽い。

それでいて中身も雑ではない。

毎日続けやすく、会話のきっかけにもなる。家庭で認知症予防を始める入口として、かなり使い勝手のいい1冊だと思う。

認知症予防の本はたくさんあるが、その多くは生活全般に話が広がり、読んだだけで疲れてしまうこともある。その点、本書は今日から何をすればいいかが明確だ。椅子に座って数分、ページを開いて取り組むだけでいい。この始めやすさは予防本として大きな武器で、家族で無理なく続けたい人に向いている。

「認知症予防のために何かしたい」と思っても、最初の一歩が重い人は多い。本書はその一歩を極端に小さくしてくれる。視覚から入る脳トレという切り口も珍しく、本人が負担を感じにくいまま習慣化しやすいのが強みだ。

一人で黙々と使ってもいいし、家族と答えを見比べながら会話のきっかけにしてもいい。そうした使い回しのしやすさも、本書が長く残る理由だと思う。

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    佐々木 健太

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