レビュー

概要

『イライラしないママになれる本』は、「何度叱っても言うことを聞かない」「なんでうちの子だけ…」と、イライラが積み重なっているときに読みたい一冊です。アドラー心理学の考え方と技法をベースに、親子関係の立て直し方を扱います。出版社内容情報でも、「叱らない子育て」「ほめる子育て」がうまくいかない人向けだと明言されていて、理想論より“日々の困りごと”から出発するスタンスが伝わってきます。

目次は5章構成。第1章は孤独な子育てに押しつぶされそうだった日々、第2章はアドラー心理学でイライラしないママになれた話、第3章はアドラー流「勇気づけの子育て」、第4章は困った場面の対処法、第5章は迷ったときのヒント。物語パートと実践パートが交互に入るので、「分かるけどできない」を減らす構成になっています。

読みどころ

1) 第1章が“しんどい気持ち”を言語化してくれる

第1章の見出しだけでも、つらさが伝わってきます。「どうして私だけがこんなつらい思いをするの?」「忘れものが減らない長男と理屈っぽい次男にイライラ」など、親の心の中で繰り返している独り言が、そのまま章の入口になっている。

ここで大事なのは、親を責めないことだと思います。疲れていると、正しい言葉ほど刺さってしまう。本書はまず、現状のしんどさを「よくあること」として受け止めたうえで、次の章で考え方を更新していきます。

2) 第2章の転換点:「子どもの行動の目的」を読み替える

第2章では、アドラー心理学に触れてイライラが変化していく過程が描かれます。目次の中に「子どもの行動の目的は親の注目を引くこと」といった見出しがあり、ここが本書の中核です。

子どもの行動を「困らせるため」と捉えると、親は敵対モードになります。でも、注目を引きたい、構ってほしい、と読み替えると、こちらの対応の選択肢が増える。イライラがゼロになるというより、イライラの火種を小さくする方向に働く発想です。

3) 第3章「勇気づけ」が、“ほめる”の罠を外してくれる

第3章には「ほめて育てるだけでは解決できないこともある」「『ほめる』と『叱る』は実は同じ行為」といった見出しがあります。ここがすごく現実的で、刺さる人が多いと思います。

ほめること自体が悪いのではなく、評価で子どもを動かそうとすると、結局「親の顔色で行動する」形になりやすい。勇気づけは、子どもが自分で動けるように支える考え方なので、短期の言うことを聞かせる技術とは違う方向を目指します。

4) 第4章の「困った場面」対処が具体的

第4章は実践編の山場で、きょうだいゲンカ、子どものダラダラ、など日常のトラブルが並びます。目次に「きょうだいゲンカは『見て見ぬフリ』が正解」という見出しがあるのも象徴的です。

親は止めたくなる。でも、止めるほど燃えることもある。本書は「どう介入するか/しないか」をケースで考え、親のエネルギーを無限に消費しないための線引きを作ってくれます。

5) 第5章が「迷う日」に効く

子育ては、うまくいく日もあれば、全部ダメに感じる日もあります。第5章には「子どもが生まれた日のことを思い出す」「今日、何回笑ったか思い出す」など、視点を戻すヒントが並びます。

ここはノウハウというより、親の心の回復の話です。理屈が正しくても、疲れていると実行できない。だから最後に“戻り方”が用意されているのは、続けるうえで大事だと感じました。

類書との比較

子育て本は、叱らない・ほめる・ルールを守らせる、など単一テーマに寄りがちです。本書は、アドラー心理学という枠組みを使いながら、親の感情(イライラ)と、子どもの行動、そして具体的な場面対応までをつなげています。

また、「正しい親になろう」と煽るより、「怒ってばかりで疲れた人」に向けて、親子関係をスムーズにする技法として提示されるので、読み手が追い詰められにくいと感じました。

こんな人におすすめ

  • 叱ってばかりの毎日に疲れてしまった人
  • 「ほめる」「叱らない」を試したが、うまく回らなかった人
  • きょうだいゲンカやダラダラなど、具体的な場面対応を知りたい人
  • 親子関係を“気合い”ではなく“考え方と技法”で整えたい人

感想

子育てのイライラって、愛情がないからではなく、余裕がないから起きるものだと思います。本書は、余裕を奪う「解釈の癖」や「介入の癖」を、アドラー心理学の視点で整理し直してくれます。

特に良いのは、困った場面の対処が具体的で、今日から使える形になっていること。完璧な親を目指すのではなく、親子関係の摩擦を減らして、笑える時間を増やす。その方向へ背中を押してくれる一冊でした。

「ほめる」と「叱る」が同じ行為、という見出しは少しドキッとしますが、読むと“評価で動かす”ことの限界が見えてきます。子どもの行動の目的を読み替え、勇気づけの言葉を増やし、困った場面では介入の仕方を選ぶ。そうやって小さく関係を整えていくプロセスが、章立ての順番として用意されているのがありがたいと感じました。

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    佐々木 健太

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