レビュー

概要

『作りながら覚える 3日で作曲入門2.0』は、「作曲を始めたいが、何から手を付ければいいか分からない」という人のために、短期間で“まず1曲”を形にする道筋を用意した入門書です。ベストセラー『作りながら覚える 3日で作曲入門』を、作曲ソフトの変更などを含めてアップデートした版として位置づけられています。

本書の核は、「理論を固めてから作る」の逆をやることです。無料の作曲ソフトを使い、まずお手本を真似して打ち込みます。曲が成立する感覚を早い段階でつかみ、その後で必要な知識を補う構成です。サンプル曲は12曲に増やされており、「真似る→少し変える→自分の曲にする」の練習を回しやすいのもポイントです。

また、参考音源や打ち込みデータは、出版社側の特設ページからダウンロードして使う導線が用意されています。読むだけで終わらず、手を動かして確認できる設計です。

「作曲って何?」というレベルの初心者から、「ちょっと頑張ってかっこいい曲を作ってみたい」という層までをターゲットにしている点も重要です。作曲は入口が広いぶん、挫折ポイントも人によって違います。本書は、入門の最初でつまずきやすい“迷い”を先に減らし、作る楽しさを体験させることに振り切っています。

読みどころ

1) 「何から始めればいいか」を、手順として固定してくれる

作曲の挫折の多くは、才能ではなく初期の迷いです。メロディから作るのか、コードから作るのか。どのソフトを使うのか。何を参考にするのか。ここで判断が多すぎて止まる。

本書は、最初の迷いを手順で潰し、「まず1曲作る」までの道を短くします。理論を“飛ばす”という割り切りがあるので、完璧主義の罠に落ちにくい。初心者にとって、これは大きいです。

2) 「真似して打ち込む」を起点に、作曲を“作業”に変える

作曲は創造的な営みですが、初心者のうちは「創造=何もないところから生む」だと思い込みがちです。その発想は、着手を難しくします。

本書は、お手本サンプルを真似して打ち込むことを前提にしているため、作曲を“やることが決まった作業”として始められます。真似ることで、音の並びとリズムが「曲に見える」瞬間が来る。そこから創造に入れる、という順番です。

3) 作曲ソフトの事情が変わっても、学びが残る設計

作曲入門の難しさは、ソフトやサービスの環境が変わる点にもあります。実際、本書には、無料DTMソフトの提供終了に伴うお知らせが記載されており、時代の変化が前提に入っています。

ただ、本書が教えているのは、特定ソフトの裏技ではなく「作曲を進める型」です。真似して打ち込む、必要な知識だけを使う、作業を分割する。この型は、環境が変わっても応用が効きます。ソフト変更が起きても、学びが無駄になりにくい点が安心材料になります。

加えて、本書は「ソフトの使用方法も解説している」とされており、完全な理論書ではなく“実践の取扱説明書”でもあります。作曲は、分かった気になっても、ソフト上で実装できないと前に進めません。読者が手を動かせるところまで落としているのが、現実的だと感じました。

類書との比較

作曲の入門書には、音楽理論(スケールやコード)を体系的に教えてから作らせるものと、DTMソフトの操作を最初に叩き込むものがあります。前者は理解が深まりやすい一方で、最初のハードルが高いです。後者は操作を覚えやすいものの、「なぜそれをするのか」が残りにくいです。

本書は、理論を最小限に抑えつつ、完成物(1曲)を先に作らせて学習のモチベーションを確保します。作曲を“趣味として続ける入口”に特化している点が強みです。理論を深く学びたい人は、本書で1曲作った後、別の理論書へ進むと相性が良いと思います。

こんな人におすすめ

  • 作曲に興味はあるが、最初の一歩で止まっている人
  • 理論より先に「1曲完成」を体験したい人
  • DTMに挑戦したいが、何を真似すればいいか分からない人
  • 手順があると、学習を続けやすいタイプの人

感想

この本を読んで感じたのは、作曲の初心者にとって必要なのは「才能」より「最初の成功体験」だということです。1曲が形になると、次に何を直せば良いかが見える。逆に、形にならないままだと、改善点が分からずに終わります。

本書は、その成功体験までの距離を短くするために、判断を減らし、手順を固定し、真似るところから始めさせます。作曲を“気合いとひらめきの世界”から、“再現できる練習”へ落としてくれる。作曲を始めたい人の背中を押す、実務的な入門書だと思いました。

作曲を続ける上で、最初に覚えておきたいのは「完璧な曲を作る」ではなく「完成させる」ことです。本書は3日という時間枠を置くことで、迷いを減らし、締切のように背中を押します。まず1曲を作ってみる。その1曲が、次の学習の土台になる。そういう学び方をしたい人に、相性が良い一冊です。

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    佐々木 健太

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