レビュー
概要
『書くのがしんどい』は、文章のテクニックだけを教える本ではありません。書けない理由の多くは技術不足ではなく、怖さや気負い、完璧主義のようなメンタルにあると捉え、その詰まりをほぐしながら伝わる文章へ進む本です。著者は編集者の竹村俊助さん。文章に苦手意識がある人でも入りやすい語り口で、書くことの心理的ハードルを下げてくれます。
本書の良さは、「うまく書く」前に「書ける状態になる」ことを重視しているところです。文章術本を読んでも手が止まってしまう人は多いですが、本書はそこを責めません。まず何がしんどいのかを言葉にして、つまずき方ごとに考え方を組み替えていきます。
読みどころ
読みどころは、しんどさを曖昧にしないことです。「わかりにくくてしんどい」「読まれなくてしんどい」「そもそも書きたいことがなくてしんどい」といった具合に、つまずき方を切り分けて考えさせます。この整理が入るだけで、悩みが「自分には才能がない」から「今どこで詰まっているのか」へ変わります。
また、本書は文章をいきなり完成品にしようとしません。伝えたいことの芯を先に見つけること、相手が受け取りやすい順番に並べること、難しいことを難しいまま書かないことなど、基本の姿勢を何度も確認します。奇抜な裏技ではなく、伝わる文章を作るための土台に戻してくれる本です。
しかも、内容は書き手を甘やかすだけではありません。読まれない理由、伝わらない理由、おもしろくならない理由をきちんと言語化して、どこを直せば届く文章になるのかを示します。優しいのに、直すべきところからは逃げないのが良いところです。
さらに良いのは、著者が編集者の視点から「読まれる文章」を語っていることです。自分が書きたいことだけでなく、相手がどこで引っかかるか、どの一文が重いか、どこまで具体に下りると届くかを考えさせます。文章を独り言で終わらせず、相手へ手渡すための視点が自然に入ってきます。
類書との比較
一般的な文章術本は、PREP法や語彙の選び方、構成の型など、技法から入ることが多いです。本書も技術に触れますが、その前に「なぜ書けないのか」を扱います。だから、書き方の本を買っても積んでしまった人に向いています。
また、創作論ほど表現の深みに寄りすぎず、ビジネス書ほど実務一辺倒でもありません。ブログ、SNS、仕事の文章、発信全般に効く広さがあります。文章の上達以前に、書くことへの抵抗感を減らしたい人にとって、かなり使いやすい立ち位置です。
読み終えると、文章力とは語彙の豪華さより、相手に届く順番を作る力だと分かります。そこへたどり着く前の気持ちの整理まで面倒を見てくれるので、単なる文章テクニック本より再読価値があります。
こんな人におすすめ
文章を書くたびに気持ちが重くなる人へおすすめです。特に、仕事で文章を書く機会が増えた人、発信を始めたいのに手が止まる人、書きたいことはあるのに形にならない人には合います。うまい文章より、まず伝わる文章を書きたい人に向いています。
また、編集や広報、営業、企画のように「相手に届く文章」が必要な仕事にも相性がいいです。文章を評価される場にいる人ほど、技術以前のメンタル整理が役立ちます。書くことへの嫌な緊張をほどきたい人には、かなり助けになる一冊です。
感想
この本のいちばん良い点は、書けない自分を責める流れを止めてくれることです。多くの人は、手が止まると気合い不足や能力不足を疑いがちです。けれど本書は、詰まり方に応じた見直し方があると教えてくれます。そう考えるだけでもかなり楽になります。
もう1つ印象に残ったのは、文章の目的が「うまさ」ではなく「伝わること」へ戻る点です。読まれる文章は、賢そうに見える文章とは違います。そこを何度も確認できるので、見栄や不安で固くなった文章をほぐしやすいです。書くことに前向きさを取り戻したい人に、素直に勧めやすい本でした。
文章が止まるたびに「自分は向いていない」と思ってしまう人ほど、この本の価値が分かると思います。書く行為を怖い試験のようなものから、相手に伝える作業へ戻してくれるからです。発信の最初の一歩を踏み直したい人には特に相性がいい一冊でした。企画書やブログの下書きに戻る勇気をくれる本でもあります。