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レビュー

概要

『認知症をくいとめる! 脳トレーニングドリル』は、高齢期の認知機能低下に対して、日々の習慣として取り組める課題をまとめた実践型の一冊です。単なる暇つぶしのパズル集ではなく、記憶、注意、言語、判断、段取りといった機能をまんべんなく使うことを意識して構成されています。

認知症関連の本には、病気の説明や介護の心得を中心にしたものも多いですが、本書は「今日から何をすればいいか」がはっきりしています。机に向かって一人で取り組める問題だけでなく、家族と会話しながら進めやすい内容も多く、自宅での予防習慣として組み込みやすいのが特徴です。

問題を解くこと自体が目的ではなく、脳を使う時間を生活の中に戻すことが主眼になっているのも好印象です。大げさな器具や特別な知識は不要で、毎日少しずつ続けられる構成なので、習慣として根づかせやすいです。

読みどころ

本書の読みどころは、脳トレを特定の分野に偏らせていないところです。単純な計算や記憶問題だけではなく、言葉を思い出す、順序を考える、注意を切り替えるといった多様な働きを使います。だから、「脳をまんべんなく動かす」感覚があります。高齢者向けのドリルというと、簡単すぎて飽きることもあります。しかし本書はやさしさを保ちつつ、頭を使った実感も残ります。

問題の形式が日常生活とつながっているのも実用的です。たとえば、物の名前を思い出す、手順を整理する、言葉を選んで答えるといった課題は、買い物、会話、家事の段取りなど、実生活で使う力に近い。だから解いて終わりではなく、「最近こういう場面で迷いやすい」「言葉が出にくい」といった変化にも気づきやすくなります。

また、本書は家族が関わりやすいのも大きな長所です。ひとりで黙々とやるだけでなく、声を出して答える、昔の記憶を話す、答え合わせを一緒にする、といった使い方がしやすいので、コミュニケーションのきっかけにもなります。脳トレは継続が難しいものですが、会話の時間に置き換えられると続けやすさが変わります。

記録を取りながら続けやすいのも地味に便利です。昨日できなかった問題が今日は少し楽に感じる、逆に特定の種類だけ時間がかかる、といった変化が見えると、本人も家族も取り組む意味を持ちやすくなります。予防系の本は効果が見えにくいことも弱点です。その点で、本書は小さな変化を拾いやすい構成です。

類書との比較

市販の脳トレ本には、計算や漢字に特化したもの、逆にゲーム感覚を強くしたものがあります。それらに対して本書は、「認知症をくいとめる」という目的に沿って、日常で使う複数の機能へ広く働きかけようとしているのが特徴です。医療書ほど難しくなく、娯楽本ほど軽すぎない、ちょうど中間の実用書という印象です。

認知症予防は、このドリルだけで何とかなるという種類のものではありません。睡眠、運動、食事、会話、外出なども重要です。その前提を踏まえたうえで、本書は「脳を使う習慣」を毎日に足すための入り口として使いやすい。過剰な期待を煽らず、できることを積み上げる方向に寄っているのが好感を持てます。

こんな人におすすめ

  • 物忘れが気になり始め、無理なく脳を使う習慣を作りたい人
  • 家族の認知機能低下が気になり、家庭で使える教材を探している人
  • デイサービスや地域活動で使いやすい脳トレ素材を求める人
  • 予防を意識しつつ、会話や生活とつながる形で取り組みたい人

感想

この本の良さは、「できることを毎日少しずつやる」方向に読者を導くところです。認知症という言葉には不安がつきまといますが、本書は怖さを煽るより、今のうちから脳を動かす時間を作ろうという現実的な姿勢で書かれています。

脳トレ本として見ても、答えを出すこと自体より、考える過程や会話が価値になるのがいいです。家族が隣で声をかけながら進めるだけでも、刺激の質が変わります。予防や進行抑制を考えるきっかけとして、構えすぎず取り入れられる一冊でした。

認知症関連の本には、不安だけを強く残して終わるものもあります。ですが本書は、日々の実践へ読者を戻してくれます。できることを少しずつ積み上げる姿勢が一貫しているので、本人や家族の負担が重くなりすぎません。長く付き合える予防習慣の入口として、使いやすい本だと思います。

文字が大きめで課題の意図もつかみやすく、家族が横で補助しやすい点も実用的です。介護の専門知識がなくても始めやすいので、「まず家で何かやってみたい」という段階の人にちょうどいい一冊でした。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

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