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レビュー

概要

リモートワークが当たり前になってきた今でも、「離れて働く」ことの難しさは残ります。雑談が減る、意思決定が遅れる、評価が不透明になる…と、距離の問題がそのままチームの問題になりがちなんですよね。

本書は、「納品のない受託開発」を掲げるソニックガーデンの創業者・倉貫義人さんが、リモートチームの運営をどう成立させてきたかをまとめた一冊です。リモートチームを「古くて新しい働き方」と捉え直し、習慣・環境づくり、企業文化、マネジメント、ワークスタイル、課題解決まで、章立てで整理されています。

著者の経歴も具体的で、立命館大学大学院を卒業後にTIS(旧・東洋情報システム)へ入社し、エンジニアとしてキャリアを積みつつ「アジャイル開発」を日本に広める活動を続けたこと、社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、オープンソース化などを経て、2011年にソニックガーデンを創業したことが紹介されています。現場の積み重ねが背景にあるので、机上の理想論になりにくい印象です。

読みどころ

  • 「論理出社」と「物理出社」を分けて考える視点が紹介されていて、リモートの“距離”を設計の問題として捉え直せるところ
  • 「社長ラジオ」や「リモート・ハッカソン」など、心理的距離を縮める具体例が挙がっているところ
  • リモートチームをテーマにしつつ、最終的に「マネジメントの本質が見えてくる」という着地になっているところ(距離の問題を、文化や意思決定の問題として解く)

類書との比較

リモートワーク本には、ツール紹介や制度の話に寄るものもありますが、本書は「チームがうまくいく条件」を、習慣・文化・マネジメントとして捉えています。

「オンライン会議を増やす」より前に、そもそもリモートで仕事を回すとはどういうことか、を立て直すタイプなので、現場の手触りを持った“組織の本”として読むと良いと思います。

本の具体的な内容(章立てで)

章立ては次の7章です。

  1. 第1章 リモートチームという古くて新しい働き方
  2. 第2章 リモートチームが実践している習慣と環境づくり
  3. 第3章 リモートチームの成功は企業文化にかかっている
  4. 第4章 リモートチームで変わるマネジメント
  5. 第5章 リモートチームで変わるワークスタイル
  6. 第6章 リモートチームで起きる課題を解決する
  7. 第7章 リモートチームに至るまでの道のり

個人的に良いと思ったのは、第2章→第3章→第4章の流れです。いきなり管理手法に飛ばず、「習慣と環境づくり」→「企業文化」→「マネジメント」と、土台から積み上げる順番になっています。

著者の背景(なぜこの人が書けるのか)

楽天ブックスの商品説明では、著者の経歴が比較的しっかり紹介されています。

  • 1974年京都生まれ
  • 1999年に立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧・東洋情報システム)に入社
  • エンジニアとして働きながら、「アジャイル開発」を日本に広める活動を継続
  • 2005年に社内SNS「SKIP」を開発・社内展開し、その後オープンソース化
  • 2011年に社内ベンチャーをMBOで買収し、ソニックガーデンを創業
  • 「納品のない受託開発」というビジネスモデルを確立

リモートワークの話が、単なる制度論に終わらず、実際に事業として回してきた前提があるのは大きいと思います。成功談だけでなく、そこに至るまでの試行錯誤が第7章(道のり)として立っているのも納得です。

まずはここから(実践の一歩)

読みながら全部を変えるのは難しいので、迷ったら次の3つから始めるのがおすすめです。

  1. 「論理出社」と「物理出社」を分けて言語化する:今のチームが“出社”に何を求めているのかを整理する
  2. 習慣と環境を棚卸しする:第2章の位置づけで、オンラインでも回る前提を揃える
  3. 小さな共通言語を増やす:「社長ラジオ」や「リモート・ハッカソン」のように、距離を埋める仕掛けを一つ試す

こんな人におすすめ

  • リモートチームの運営を任されたが、何から整えればいいか分からない人
  • チームの文化や信頼が、オンラインになった途端に薄れてしまったと感じる人
  • テレワークを“制度”ではなく、“働き方の設計”として整えたい人

感想

リモートの問題って、結局は「ツールが悪い」ではなく、「前提が共有されていない」ことが多いと思うんです。この本がいいのは、距離の問題を“工夫”でごまかすのではなく、習慣・文化・マネジメントの順で整えていくところ。

特に「論理出社」と「物理出社」を分ける発想は、在宅でも“出社したことにする”のではなく、仕事の実態に合わせて働き方を再設計するヒントになります。「社長ラジオ」や「リモート・ハッカソン」も、単なるイベントというより、チームの共通言語を増やす仕掛けとして使えるのが良いなと思いました。

読み終わったあと、リモートに対する不安がゼロになるわけではないですが、「何から手を付ければいいか」が整理されます。まずは第2章で、いまのチームの“習慣と環境”を棚卸しするところから始めたくなる一冊でした。

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    佐々木 健太

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