レビュー
概要
収納アドバイザーとして200軒以上の現場を知る本多さおり氏が、身近な暮らしの「モヤモヤ」から入り、性格や気合ではなくしくみで片付けを続ける方法を提示する一冊。家族にイライラを向ける前に、よく使うモノの置き場所や動線を改めて整理し、リビング・寝室・ランドリーのように場所別の工夫を豊富な事例とともに紹介する。物の全出しや分類の練習をはじめ、著者が繰り返し使っている思考回路を追うことで読者自身が「自分の収納地図」を描ける構成になっている。身近な家事の延長線上にある「かばんの中身」や「子どものモノの収め方」まで丁寧に扱い、Columnごとに収納用品の選び方や助っ人ツールを紹介しているので、リビングの収納を変えてから寝室、ランドリーと段階的に進めるときの迷いが減る。暮らしのベースとして収納の位置づけを再認識させてくれる。
読みどころ
- 家のモヤモヤを言語化する質問リスト:モノが近くにない、しゃがんで取っている、モノの落下や重複購入といった現象を枚挙し、それぞれのモヤモヤが「しくみのズレ」であることを浮き彫りにする。「変えるべきは性格ではなく収納のしくみです」という問いかけが、読者の視点を改革する。
- 場面別の具体的な工程追跡:本多家のリビング・寝室・ランドリーを、「とことん活用する」目的で解説し、どこから手を付けて、何を省いて、どう配置を変えたのかを巻き戻して丁寧に見せる。現場の写真とステップが脳内で再現できるので、同じ間取りや道具でも自分の家に即置換できる。
- ラクをかなえるテクニック集:空中収納、扉裏の再発見、動線に合わせた配置、掃除しやすい収納、一歩も動かない収納、引き出しの活用といった8つの技を紹介。どれも既存の道具を流用し、買い替えを促さずに変化を出す発想なので、取り入れる心理的なハードルが下がる。
- ビフォーアフターの実況とコンサルティング:キッチンや洋服、子どもスペースの事例を通じて、整理収納の4ステップを丁寧に示し、著者の「how toコンサルティング」をメモ感覚で再現できる。収納の考え方を学ぶだけでなく、迷ったときに見返す動画のようなレクチャーパートとして作用する。
- Columnで補足される小ネタ:収納家具の変遷や使っていない子どもモノの整理、強力助っ人アイテムとしてのコマンドタブなど、本文にあるエピソードを補強するColumnが随所に差し込まれており、実例を読みながら「やってみたい一手」を小出しにできる。
- 暮らしがラクになる三か条と未来の暮らし像:まとめの章では著者が自らの暮らしに求める要素を語り、収納を暮らしの基盤として扱う視点を再確認させてくれる。読み終えると「何を残して、何を手放すか」が身近な選択に思える。
類書との比較
『人生がときめく片づけの魔法』が「ときめく」感覚を軸に捨てる判断を促すのに対し、本書は感情ではなく暮らしの動線と場所の使い方に徹底的に寄り添う。こんまりメソッドはときどきリセット感が強く、やる気がないと止まってしまいがちだが、『とことん収納』は「いつもの使いながら変える」スタイルなので習慣化しやすい。また、ズボラでも取り入れられるその場での整理を重視する点で、同じく暮らし系の『断捨離』的な強い断絶ではなく、毎日のチョイスを丁寧に変えていくアプローチだ。
こんな人におすすめ
- 片付けが続かず自己否定を繰り返している人
- 家族と使う共有スペースをすっきりさせたい人
- 収納用品を買い替えず、家にあるものを再編したい人
- 子育てや在宅ワークでモノと動線が入り混じる家に悩む人
- 収納を暮らしの土台に据えたい人
感想
- 具体的なシチュエーションと著者の思考回路を追う構成なので、「どこから手を付けたらいいのか」を自分の家に当てはめながら読み進められた。
- リビングやランドリーの事例では、写真だけでは伝わりづらい「何を減らすか」「何を近づけるか」が肉声で説明されており、読み返しがしやすい手引きとして機能した。
- 収納の改善が「行動の選択の幅を広げる」ことだと気づかせてくれる一冊。収納のしくみを変える勇気が湧き、日々の暮らしの安心感がじんわり育っていく感覚があった。
- 何度か読み返すうちに自分も「収納コンサル」をしている気分になり、家族と一緒に収納のストーリーを語る材料になった。語り口が淡々としているのに具体的で、言われたとおりではなく自分の暮らしに合わせて編集できる柔軟さがありがたい。