レビュー

「わかりやすく書けない」の原因を、文章ではなく論理に置く

『新版 考える技術・書く技術』は、わかりやすい文章を書くことを、センスではなく構造の問題として扱う本です。商品の説明では「明快な文章を書くことは、明快な論理構成をすることにほかならない」と言い切っています。

文章術の本は、言い回しや表現の工夫に寄りがちです。でも、実務で詰まるのはもっと前です。何をどう並べればいいかが分からない。結果として書けないし、読み手も迷う。本書は、その根本を「論理構造」に置き、そこから整える道筋を示します。

ピラミッド原則が効くのは、結論と根拠の位置を固定できるから

本書が提示する「ピラミッド原則」は、結論を上に置き、その下に根拠や要素を階層的に並べる考え方です。言ってしまえば単純ですが、単純だからこそ守るのが難しい。

報告書や企画書が読みづらいのは、読み手が「いま結論を読んでいるのか、背景を読んでいるのか」が分からない状態に落ちるからです。ピラミッドの形を意識すると、文章が「読む順番」を持ちます。読み手の理解が速くなるのは、この順番が整うからです。

文章の悩みを、フレームワークで分解する

商品の説明では、序文で注意を引くにはどうすればよいか、相手を説得するにはどんなロジックを用いるか、問題点をどうまとめるか、といった疑問に対し、それぞれ適切なフレームワークを用意していると書かれています。

ここが本書の使いやすさだと思います。書くときの悩みは「全部」ではなく、たいてい特定の場面で詰まります。

  • 書き出しが弱くて、最後まで読まれない
  • 結論はあるのに、根拠が散らかる
  • 反論されると崩れる
  • 問題の整理ができず、議論が進まない

こうした悩みを「場面」ごとに分解して、型を当てはめる。そうすると、文章が急に実務の道具になります。

「読むのに骨が折れる」タイプの本。だから効く

説明文の中には、サンプルとして用いられている事例が複雑でわかりにくい、という指摘もあります。ここは正直で良いと思います。

ただ、複雑な事例を扱うからこそ、実務でも応用可能な論理的思考の訓練になる、という評価も添えられています。簡単な例で分かった気になるより、難しい題材を「構造」で整理できるようになるほうが、仕事の武器になります。

すぐ使える場面:メール、報告、提案、会議のメモ

ピラミッド原則は、立派な文章だけの話ではありません。むしろ、短い文章ほど効きます。

  • メールの冒頭で結論を先に置く
  • 報告で「結論→理由→次のアクション」を固定する
  • 提案で、主張と根拠を階層化して並べる
  • 会議メモで、論点をグルーピングしてまとめる

こうした場面で、読み手の負担が減ります。負担が減ると、理解が速くなります。理解が速いと、意思決定が進みます。本書は、文章術でありながら、実務の摩擦を減らす本でもあります。

読み方のコツ:手元の文章を1つ書き直す

本書は、読んで納得するだけだと身につきにくいです。おすすめは、いま困っている文章を1つ選び、ピラミッドの形に組み替えてみることです。

長くなってしまったメール、説明が通らなかった提案書、議論が散った会議メモ。題材は何でも構いません。結論を1行にし、その下に根拠を3つだけ並べる。これだけでも、文章の密度が変わります。

注意点:型を当てる前に「何を言いたいか」を決める

フレームワークが便利なぶん、よくある失敗もあります。型に当てはめること自体が目的になり、言いたいことが薄くなるパターンです。

ピラミッドは、結論が上にあるから美しい。結論が曖昧だと、下の段がいくら整っても弱いままです。だからこそ、本書は「考える技術」と「書く技術」をセットにしているのだと思います。まず考える。次に書く。この順番を守るだけで、文章は見違えるはずです。

類書との違い:文章術というより、問題解決と説得の技術

本書のタイトルは文章術ですが、実際は問題解決と説得の技術に近いです。報告書や企画書で必要なのは「書く」より「考える」ことです。考えが整理できれば、文章は自然に整います。

文章が整うと、会議の議論も整います。伝達が速くなり、誤解が減り、意思決定が早くなる。そういう意味で、本書は「書く技術」であり「働き方の技術」でもあると思います。

こんな人におすすめ

  • 企画書や報告書がいつも長くなり、結論がぼやける人
  • 「言いたいことはあるのに伝わらない」経験が多い人
  • 論理の組み立てを、型として身につけたい人
  • 説得のための文章を、再現性のある形にしたい人

まとめ

『新版 考える技術・書く技術』は、わかりやすさの源を文章表現ではなく論理構造に置き、「ピラミッド原則」で結論と根拠の階層を整える方法を示す本です。序文の作り方、説得のロジック、問題点のまとめ方など、場面ごとのフレームワークが用意されています。読みやすい本ではないかもしれません。ただ、その分、実務の文章を「考える→書く」の順で強くしたい人に向いた一冊です。

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    佐々木 健太

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