レビュー
概要
マナー講師として皇族・政財界、女優までを指導する諏内えみ氏が、「育ちがいい人」の所作や言葉づかいを256ページのエピソードと写真で伝える一冊。マナーの細部をリストにしながら、ただの“正解”ではなく相手を思いやるリズムを身につけることに力点を置く。
読みどころ
- 1章では表情、立ち姿、所作を「育ちの出し方」と捉えて、例えばエレベーターでの立ち位置や、ドアの開け閉めで見せる静かな気遣いを、一枚の写真と短い解説で示す。無表情と微笑の間の「ほほえみの姿勢」を意識しながら、自然な笑顔の作り方のテクニックを習得させる。
- 2章以降では言葉づかいを分析。「にじみ出る育ちのよさ」と称される「お」をつけるべき四つの言葉(例: お帰り、お仕事、お手洗い、お気持ち)や、「それではなく」「もういいや」ではなく「そのままで大丈夫よ」と相手を包む言い方の練習を提示し、場面ごとに変える指針を箇条書きで提案。
- 中盤では、食事のマナーや振る舞いの「分解」。例えば逆さ箸がなぜ好ましくないかを単純に「不衛生」ではなく「相手の皿に振動を伝える」など身体感覚から説明することで、単なるルール暗記ではなく体に染み込ませる仕掛けとなる。
- 後半では「困った場面の切り返し」を豊富な事例で紹介。「相手が詮索してきたときは、質問を選んでかわす」「褒められたときの正しい返し方」といった、即回答できるフレーズが箇条書きで並び、場面別リストとして使える構成になっている。
類書との比較
『嫌われる勇気』などが心理面からの自律を促すのに対して、本書は「振る舞いがそのまま心理を変える」方法を紹介する。前者が自己対話の設問を多く載せるのに対し、後者は振る舞い・言葉・感覚のセットで場面を丸ごとトレースし、「育ちのよさ」を別の結果(たとえば人を安心させる)へ翻訳する。そのため、実際の接遇現場で“何をどう言えばいいか”をすぐに確認できる。
こんな人におすすめ
・日常や仕事のなかで“育ちがいい”と言われたい人。実践的な所作リストで身のこなしを整えやすい。
・親や指導者として子どもにマナーを伝えたい人。具体的なフレーズと場面で模範を示せる。
・接遇・PRの仕事で緊張する人。即効で整うリズムを学べる。
感想
テレビで見ていた諏内氏の穏やかな語りをじっくり噛みしめるような読後感。どちらでも構わないで終わるのではなく、「あえて〜」を選ぶことで空間が静まる瞬間がわかる。日常的な困りごとに対して「私はこう伝える」「こう返す」と1回でも声に出して練習してみると、周囲の反応が変わる。育ちのよさは作るものだと実感する。