レビュー
概要
偏差値30から司法試験を突破し、TVや法律ドラマの監修も務める佐藤大和氏が、従来の”理解”中心ではなく、「答えを見て、記憶を再現する」逆転のロジックを〈ずるい暗記術〉と名付けて解説する。講義・ノート・参考書を排し、限られた時間で結果を出すためのモチベーション管理・記憶の仕組み化・出題傾向のつかみ方を、体験談を交えながら分かりやすく並べている。
読みどころ
- 序章で自身の「落第・ギャング」エピソードを語り、偏差値30のビリから弁護士になるまでの苦闘を反転させる。ここでは“勉強時間を減らす”ことこそが成功のカギだとし、受験勉強が「勉強時間=努力」になる罠を指摘している。
- 第1章では「答えだけを先に見る」メソッドを丁寧に手順化。まず過去問の正答を覚え込み、次に設問に戻る。こうすることで脳が「答えにたどり着く筋道」を覚えてしまい、マルチステップの記憶が自然に形成される構造だ。本番で問題に直面したとき、自動的に解法が再現される――この動きを「ヤンキー式反復」と読者に命名させる。
- モチベーション章では「気持ちの波」を管理するワークを紹介。たとえば「今日は1ページも覚えられなかった」感覚の直後に次の小さな成果(例:1問だけ解く)を仕込むことで、達成感を段階的に高める。単なる根性論ではなく、感情に合わせてタスクを段階付けし、失敗しそうなときは準備量を逆算する。
- 後半の「アウトプット」パートでは、答えを出すときの声出し・書き出し・指差しなどの身体的なルーチンを示す。記憶を口に出すことで神経回路を固定化し、司法試験のような長時間戦で気力が落ちても、体が勝手に正解を指す仕組みになる。
類書との比較
『記憶術 No.1』が記憶の仕組みを脳科学的に遡るのに対し、本書は「結果重視」の資格試験に即効のトリックを当てはめる。前者が記憶の土台と説明の量で勝負するのに対し、『ずるい暗記術』は行動を完全に逆転させる。例えば、ノートを取りながら意味を追うと構造化される時間がかかるが、佐藤氏は「答えを見て繰り返す」ことで記憶の効率を上げる実践を選ぶ。
こんな人におすすめ
・資格試験で短期間に成果を出さなければいけない社会人。答案作成に近い行動で覚えられるメソッドがある。
・勉強に時間をかけても結果につながらないと感じている学生。勉強の見せ方を再設計することで達成感を取り戻せる。
・司法試験や公認会計士試験で落ち続けた経験がある人。失敗体験をリセットする方法も具体的に示している。
感想
一言でいえば「努力よりも仕組みを変える」本。理解より記憶を先行させる方法は初めてだったが、実際に過去問の正答だけを音読し、それから設問を読み返すと、頭の中で答が浮かぶ瞬間があった。重視すべきは、答え方を練習する時間、そしてその答えを引き出す動作を習慣にすることであり、日々の勉強への向き合い方が一気に変わる。数学的理解ではなく”答えの再現”を鍛えるため、試験当日の緊張下でも再現性が高い。