レビュー
概要
『外資系コンサルの資料作成術』は、PowerPointの操作本ではなく、「相手を動かす資料はどう組み立てるのか」を教える本です。著者は外資系コンサルの現場で鍛えた視点をもとに、資料づくりを見た目の問題ではなく、意思決定の支援として捉え直します。会議資料、提案書、役員報告、営業資料など、ビジネスで資料を作る人なら用途を問わず読めます。
この本の良さは、資料作成の前段にある思考整理から入ることです。何を伝えるか、誰に伝えるか、相手にどう判断してほしいのか。そこが曖昧なままでは、どれだけ整ったスライドを並べても伝わりません。本書は「資料は見た目を整えるより先に、まず論点を立てるものだ」と何度も思い出させてくれます。
読みどころ
読みどころの1つ目は、資料の出発点を「結論」ではなく「相手の変化」に置いているところです。相手に理解してほしいのか、判断してほしいのか、動いてほしいのかで、必要な構成は変わります。本書はその違いをはっきり意識させるので、ただ情報を並べるだけの資料から抜け出しやすいです。
2つ目は、論理と見せ方を切り離さないことです。よくある資料本はデザイン寄りか、ロジック寄りに偏りがちですが、本書は両方を同時に扱います。タイトルで何を言うか、1スライドに何を載せるか、表とグラフをどう使い分けるかといった判断が、資料全体の説得力にどう効くのかが分かります。
3つ目は、ラフに考え、あとで絞る流れを認めている点です。最初から完璧なスライドを書こうとすると手が止まりますが、本書はまず荒く出し、構造を見直し、最後に磨く順番を示します。資料作成が遅い人ほど、この順番を知るだけでかなり楽になります。
また、読み手の目線へ戻るチェックが強いのも良いところです。作り手はどうしても「自分は分かっている」前提で書きがちですが、本書はそこを疑わせます。主張、根拠、次の行動が滑らかにつながっているかを見直す視点は、そのまま社内外の説明力に直結します。
資料づくりで本当に困るのは、ソフトの操作より「どこまで削るか」です。本書はその削り方にも一貫した考え方があります。情報を増やして安心するのではなく、判断に不要なものを外していく。そこを意識できるだけで、会議資料の密度はかなり変わります。
さらに、口頭説明と資料の役割分担を考えやすくなるのも利点です。全部をスライドへ書く必要はなく、資料で支える部分と話して補う部分を分けると、相手の理解はむしろ進みやすいと分かります。発表のための資料に慣れていない人にも、この視点は役立ちます。
類書との比較
ロジカルシンキングの本が「考え方」を教え、PowerPoint本が「見せ方」を教えるのに対し、本書はそのあいだを埋めます。だから、資料作成で本当に困る場面に強いです。何を書けばいいか分からない段階にも、見た目が散らかる段階にも効きます。
一方で、テンプレート集のようにすぐ真似できる型だけを大量に並べる本ではありません。考える負荷は多少あります。ただ、そのぶん一度身につくと、企画書や報告書、提案書へ広く応用しやすいです。
こんな人におすすめ
企画、営業、コンサル、事業開発、管理職補佐など、「資料で仕事を前に進める」人におすすめです。特に、伝えたいことはあるのにスライドへ落とすと弱くなる人には相性がいいです。
また、資料作成に時間がかかりすぎる人にも向いています。速く作るには近道が必要というより、考える順番を整える必要があると気づけます。
感想
この本を読んで強く感じるのは、良い資料は「作り込んだ資料」ではなく、「判断しやすい資料」だということです。派手な図や難しい言葉がなくても、論点と根拠が整理されていれば、相手は動きやすくなります。
資料作成に苦手意識がある人ほど、センス不足ではなく順番の問題だったと分かるはずです。見栄えを整える前に、相手と結論を定める。この当たり前を実務で使える形まで落としているところに、本書の価値があると感じました。
資料は作業時間を奪うものでもありますが、考え方が定まればむしろ仕事を前へ進める武器になります。その境目を具体的に教えてくれる本として、若手だけでなく中堅にも読み返す価値がある一冊でした。
特に、忙しいときほど資料の質が落ちやすい人には効きます。短時間でも筋の通った説明を組み立てるための型として、手元に置く意味がある本でした。