レビュー
概要
「実験心理学の知見を、具体的な学習の場面に落とし込むとどうなるか?」を問う1冊で、2019年の発行ながら2020年からの教育改革で注目された英語・プログラミングにもきちんと目線を向けている。著者は心理学者で、子をもつ親として、大学で学生を指導する立場で得た「子どもが実際に効くと実感するメソッド」に絞って構成しており、高校受験や資格試験だけでなく社会人の学び直しにも使える視点を持つ。
読みどころ
- 第一章から、第5章ごとに「脳と心の特性を生かすアイデア」「集中と記憶」「対話と手を動かす勉強」「1日単位でメリハリ」「プログラミングや英語」のように科目や形態別にアプローチを分けているので、漢字や算数という具体的なテーマを鏡にしながら、英語やプログラミングのような抽象度の高い学びにも視点をはる伸び代がある。
- 「復習はすぐにさせないほうがいい」「気が散った時はゆったりしたルーティンで戻す」「最初に目的を言葉にしてから手を動かす」という実験心理学由来の指摘を、事例(漢字や算数)とその裏にある脳の仕組みをセットで紹介することで、説得力が高い。
- 付録的に「質問と回答」のコーナーを設け、親の疑問と研究知見を照合したうえで、予測と事実を整理するパターンは読み返し用途にも向いている。
- 章末には、子どもだけでなく「大人の棚卸し」にも使えるチェックポイントを載せており、行動科学的なセルフモニタリングが自然に身につく。
類書との比較
『学びを結果に変えるアウトプット大全』が「インプットしたら即アウトプット」「アウトプット回数を増やす」といったパターンで学びを現実世界に繋ぐ設計をしているのに対し、本書は「勉強の前後」に焦点を当てて、漢字なら書き順、算数なら式の立て方、英語なら音声での反復のように科目の入口からアプローチする。アウトプットの頻度も重要だが、竹内氏が重視するのは「アウトプットに至るまでの時間と準備」であり、心拍や集中の波にあわせて作業環境を調整する点で両者の位置づけが補完関係にある。
こんな人におすすめ
・親として、部屋で一人で勉強するわが子を見守る立場の人。心理学者の目線で、やる気の振れ幅と集中のバランスを説明してくれるので、声かけのトーンや休憩の入れ方を自信を持って選べる。
・「21世紀型スキル」として算数や英語を学ぶ必要性を感じながら、どこから手をつけてよいか分からない大人。具体例と合わせて時間の使い方が整理されているので、リカレント教育の入口に使える。
・子どもと一緒に学び、親がメタ的に学習法を体系化しておきたい教育関係者。チェックリストとQ&Aが教室での対話にも使いやすい。
感想
「復習はすぐにやるな」というタイトルだけを見ると非直感的だが、各章の事例を追ううちにその意味が具体的に腹に落ちる。子ども向けの例を使う一方で、全体を貫くのは「行動と心の同期を取り戻す」こと。教室や家庭で習慣を整えるときに、たとえば漢字を覚えるときに本書が提案する「まず目で追い、声に出し、少し時間をおく」プロセスを意識してから、英語の音読やプログラミングの分解問題に入ると、手を動かす段階での迷いがぐっと減る。午後の部屋の照明や休憩の取り方まで踏み込んでいるので、机上のテクニックではなくライフスタイル全体を再構築したい人に向いている。