レビュー
概要
『一生使えるプレゼン上手の資料作成入門』は、伝わる資料を作るための基本を、構成、デザイン、グラフ、配色の順に学べる入門書です。著者の岸啓介さんは、見やすい資料を再現するためのルールを、感覚ではなく手順として示してくれます。PowerPointの小技集というより、「相手にどう読ませるか」を考える本です。
この本の良さは、スライドを飾る前に、まず情報の並べ方を整える点にあります。何を一番伝えたいのか、1枚に情報を詰め込みすぎていないか、タイトルと本文がずれていないか。資料作成で崩れやすい基礎を、最初に立て直してくれます。
読みどころ
まず役立つのは、1スライドごとに何を伝えるのかをはっきり決める考え方です。資料が分かりにくい原因は、デザイン以前に、1枚の中で論点が散っていることが多いです。本書は、タイトル、要点、根拠の関係を整理しながら、スライドの中心線を作る感覚を教えてくれます。
次に良いのは、フォント、余白、配色といった要素が、見た目の好みではなく読みやすさの問題として説明されるところです。文字の大きさに差をつける理由、色を増やしすぎない理由、余白を空ける意味が分かるので、自己流で崩れていた資料を直しやすいです。見栄えを整えるというより、相手の理解を邪魔しないためのデザインとして学べます。
また、グラフや図の使い分けにも踏み込んでいます。数字を並べるだけでは伝わらない場面で、棒グラフ、線グラフ、図解のどれが向くのかを考える視点が得られます。研究発表で使えますし、社内報告にも応用しやすいです。データを見せる場面は多いので、この部分はかなり実用的です。
さらに、作例の見せ方が親切です。良い例だけでなく、よくある崩れた例との比較があるので、「自分の資料はここで損をしていたのか」と気づきやすいです。資料作成の本は読んだ直後だけ役立つものもありますが、本書は作るたびに戻りやすいタイプだと思います。
類書との比較
資料作成本には、デザイン寄りの本と、論理構成寄りの本があります。本書はその中間で、構成から見た目までを一冊で押さえられるのが強みです。コンサル流の本ほど固くなく、デザイン本ほど感覚的でもありません。最初の基礎固めに向いています。
また、話し方の本ではなく資料の本なので、プレゼンが苦手な人でも入りやすいです。まず資料を整えてから話し方へ進みたい人には順番が合っています。
こんな人におすすめ
社内報告、営業提案、研究発表などで、資料を作るたびに時間がかかる人におすすめです。特に、情報はあるのに見せ方で損をしている人には向いています。プレゼン初心者だけでなく、自己流のクセを直したい中堅にも役立ちます。
また、部下や後輩へ資料の作り方を教える立場の人にも使いやすいです。感覚論ではなく、共通ルールとして渡しやすいからです。
営業資料だけでなく、研究発表や社内勉強会のスライドにも応用しやすいです。数字や根拠を見せる資料ほど、情報の順番と見せ方の差が大きく出るからです。
感想
この本を読んで良かったのは、資料作成をセンスの問題だと思わなくなったことです。伝わる資料には理由があり、読みにくい資料にも崩れるパターンがあります。本書はその差を丁寧に言葉にしてくれるので、作るたびに改善しやすいです。
もう1つ印象的だったのは、読み終えた後にすぐ直せる点が多いことでした。色を減らす、余白を残す、見出しで主張を先に言う。そうした小さな修正だけでも資料は変わると実感できます。資料作成の基礎を一度ちゃんと固めたい人に、かなりおすすめしやすい一冊です。
特に、内容には自信があるのに反応が薄い資料を作ってきた人には効くと思います。伝わらない原因が情報量ではなく整理不足だったと分かるだけで、改善の方向がかなり明確になります。長く使える基礎本として手元に置きやすい本でした。
PowerPointの操作本ではなく、相手の理解を設計する本だと捉えると価値がはっきりします。見た目だけきれいでも伝わらない資料は多いです。本書はそのズレを埋めてくれるので、資料作成に苦手意識がある人ほど効果を実感しやすいはずです。
最初の1冊としても、自己流の見直し本としても使えます。資料作成の型を手元に置きたい人には十分価値があります。
資料の基礎体力を作る本として、かなり使い勝手がいいです。