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レビュー

概要

『葉桜の季節に君を想うということ』は、読者の「読み方」を試してくるミステリーです。私はこの作品、内容より先に「読んでいる自分の頭」を揺さぶられる感覚でした。だからこそ、ネタバレに弱い。何も知らない状態がいちばん面白いです。

タイトルだけ見ると、恋愛小説っぽい雰囲気もあります。でも読み始めると、空気は少しずつ変わっていきます。どのジャンルとして受け取るかで、見えるものが変わる。その仕掛けが、作品全体の核になっています。

読みどころ

1) 読者の「思い込み」が物語の一部になる

ミステリーを読むとき、人は無意識に「こういう展開だろう」と予測します。この作品は、その予測を上手に利用します。予測が当たっているようで、どこかズレる。そのズレが気持ち悪くて、読み進めてしまいます。

2) 会話とテンポが良く、最後まで連れていかれる

文章が重たいタイプではありません。だからこそ、油断しやすいです。私は、読みやすさが罠になっている作品ほど怖いと思います。

3) 読後に「見えていたもの」が変わる

読み終えた瞬間に、序盤の会話や描写が別の意味を持ち始めます。私はここで、タイトルの切なさが遅れて効いてきました。

本の具体的な内容(ネタバレ控えめ)

物語は、日常の延長にある出来事から始まります。そこに人間関係が絡み、違和感が増えます。違和感は、小さすぎて説明しづらい。でも「気になる」という感覚だけが残ります。その残り方が上手いです。

私はこの作品を読んで、ミステリーの面白さって「情報」だけではなく、「見方」の問題でもあると思いました。同じ文章でも、読者の中の前提が違うと意味が変わります。この作品はその現象を、物語として体験させてきます。

タイトルの切なさが遅れて来る

読み終えたあとにタイトルを見ると、最初に抱いていた印象と違って見えます。私はそこで、少し胸が痛くなりました。タイトルが“答え”ではなく“余韻”として残る感じです。

この作品は、読み終えた瞬間にスッキリさせるというより、読後にじわじわ刺します。ミステリーの快感と、少し寂しい気持ちが同居します。

類書との比較

どんでん返し系の作品はたくさんあります。でも本作は、驚かせ方が派手というより、読者の視点をずらすタイプです。だから、単発のびっくりで終わらず、後からじわじわ来ます。

どこが「うまい」と感じたか(ネタバレなしで)

私はこの作品、読み終えたあとに「文章が信用できない」という変な感覚が残りました。もちろん嘘が書かれているわけではありません。むしろ、書いてあることはそのままです。

でも、読者が勝手に補っていた前提がある。そこに気づいた瞬間、同じ文章の意味が変わる。私はこの“前提の揺らし方”が、本作の一番の技術だと思いました。

読後の楽しみ方

読み終えたら、すぐに解説を探すより先に、次の2つだけ思い出すのがおすすめです。

  1. 自分がいつ「分かった」と思ったか
  2. そのとき、何を根拠にしたか

ここを自覚すると、読み返しが面白くなります。2回目は、読み方が変わります。

こんな人におすすめ

  • ネタバレなしで強い一撃を受けたい人
  • どんでん返しが好きな人
  • 読後に「ちょっと待って」となりたい人
  • 読み返しで2回おいしい作品が好きな人

合う人・合わない人

スピード感のある事件ものを求める人より、視点のズレを楽しめる人に向きます。私は、読書の体力がない日でも読みやすいと思いました。

逆に、すべてを丁寧に説明してほしい人には、余白が多く感じるかもしれません。余白があるから、考え込みます。

読み方のコツ

検索は我慢したほうがいいです。作品名で調べると、見出しだけで核心に触れてしまうことがあります。読後に解説を読むのは楽しいので、まずは最後まで走り切るのがおすすめです。

私は、途中で「分かったかも」と思っても、そのまま読み続けるのが良いと思いました。確信が生まれた瞬間は、いちばん危ないです。

注意

この作品は、感想を人に話したくなります。でも、言葉にすると面白さが削れます。読み終えるまでは、できるだけ沈黙をおすすめします。

読後にやると面白いこと(ネタバレなし)

私は読後、「すぐ誰かに言いたい」と「何も言いたくない」が同時に来ました。たぶんこの作品、説明すると薄まるタイプだからです。そこでおすすめしたいのが、声に出して説明する代わりに、次の2つだけ自分の中で整理することです。

  1. 途中で「この話はこういうことだ」と思った瞬間はいつか
  2. そのとき、自分はどの情報を“見ているつもり”だったか

この2つを振り返ると、物語が仕掛けていたのは情報量の勝負ではなく、見方の誘導だったと分かります。私はここを意識しただけで、タイトルの余韻が深くなりました。

読むタイミング

テンポが良いので、一気読みもできます。ただ私は、寝る前に読むなら「最後まで行ける日」を選ぶのがいいと思いました。途中で止めると、違和感だけが残って落ち着かないんですよね。

逆に、休日の昼に読むと気持ちが軽いまま走り切れます。読み終えたあとに少し散歩できる時間があると、頭の中がほどけて余韻がきれいに残ります。

感想

私は読後、しばらく自分の読書体験を疑いました。読み手の頭の中で勝手に作っていた前提が、どれだけ強かったのかを思い知らされます。

驚きはもちろんあります。でも、それ以上に残るのは「人は見たい形で世界を見る」という怖さでした。ミステリーの快感と、少し苦い余韻がセットの1冊です。

私は、読み終えたあとにタイトルを見返して、少しだけ胸が痛くなりました。最初に見えていたものが違って見える。そういう作品です。

読み終えた直後は説明したくなるのに、説明すると壊れる。そんなジレンマも含めて、ミステリーとして強いと思いました。

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    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。
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    佐々木 健太

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