レビュー
概要
『大ピンチずかん3』は、子どもの日常に潜む「大ピンチ」を図鑑化するシリーズ第3弾で、これまでの基本(大ピンチレベル順の掲載)を守りつつ、新機軸として「うっかりメーター」を搭載した一冊です。ピンチは失敗の結果として起きますが、その手前には「うっかり」がある。第3巻はその手前に踏み込み、「なぜ起きたのか」「どれくらいうっかりなのか」を考える方向へ、分析が進化します。
さらに「学校の大ピンチ」「むしの大ピンチ」など、新しい切り口でピンチを集めた章も入り、生活圏が広がった子どもの“現場感”に寄ってきます。第1巻が家庭のピンチ、第2巻が分析の強化だとしたら、第3巻は“世界の拡張”の巻だと思います。
読みどころ
1) 「うっかりメーター」で、ピンチの手前を考えられる
失敗を叱るのではなく、失敗の構造を知る。うっかりメーターは、原因を責める道具ではなく、原因を笑って扱う道具として機能します。
2) 「学校」「むし」など、子どもの世界が広がった
家庭だけでなく、学校の場面、外で出会う虫との場面など、ピンチの舞台が増えます。子どもが「これ、ある!」と言いやすく、体験の共有が起きます。
3) 情報量が増し、“ずかん”としての快感が強い
巻を重ねるごとに情報量が増え、読む側の遊び方も増えます。レベル、なりやすさ、グラフ(第2巻)、うっかりメーター(第3巻)と、ピンチの見方が多層になります。
本の具体的な内容
構成の軸は、これまで通り大ピンチレベルの小さい順の掲載です。だから初見の子でも入りやすい。そこに「うっかりメーター」が加わり、同じピンチでも「うっかりの度合い」を考えられるようになります。たとえば、やってはいけないと知っているのにやってしまったピンチと、そもそも知らなかったピンチでは、怖さの種類が違う。うっかりメーターは、その違いを言葉にする補助になります。
また、この巻で特徴的なのは、章立ての切り口です。「学校の大ピンチ」「むしの大ピンチ」といった形で集めた章が入り、レベル順の流れとは別の読み方ができます。学校のピンチは、周囲の目があるぶん恥ずかしさが増えたり、逃げ場が少なかったりする。虫のピンチは、怖さが“未知”から来ることが多い。こうしたジャンル分けは、ピンチの性格を変え、読者の語り方も変えます。
第1巻・第2巻から続く良さとして、ピンチを「知ればこわくない」に近づける言語化があります。第3巻はそこに、うっかりの視点が入った分、「次はどうする?」に一歩近づきます。うっかりを減らす工夫、気づくコツ、準備の仕方——そういう行動の入口が、自然に浮かぶ構造です。
個人的に良いと思ったのは、うっかりメーターが「気をつけなさい」で終わらないところです。注意力は、疲れや眠さ、環境のわちゃわちゃで簡単に落ちます。だから“うっかりの度合い”として扱うと、叱責より先に「どうすれば気づけるか」を考えやすい。学校や外の場面が増える時期ほど、こうした見方は役に立ちます。
また、レベル順で読み進めるだけでなく、「学校の章だけ」「虫の章だけ」とテーマ読みできるのも第3巻の良さです。同じ“怖い”でも、教室で感じる怖さと、外で感じる怖さは質が違う。章でまとめて読むと、その違いがはっきりし、「どの場面で固まりやすいか」を話題にしやすくなります。
そしてシリーズとして一貫しているのが、ピンチを“他人事”にしない絵の力です。子どもは自分がやらかしたピンチを、説明するときに照れます。でも絵本の中の誰かが同じことをやっていれば、笑いながら話せる。第3巻はその素材がさらに増え、家の会話が増えるタイプの本です。
類書との比較
同じシリーズ内で比べると、第3巻は「原因の手前」を扱った点が大きいです。失敗のカタログから、失敗の構造分析へ。ピンチを“運”ではなく“構造”として扱えると、怖さは減りやすい。絵本でそれをやっているのが面白いところです。
こんな人におすすめ
- 『大ピンチずかん』『大ピンチずかん2』が好きで、シリーズを追いたい人
- 学校生活が始まり、家以外のピンチが増えてきた子
- 失敗を叱るより「笑って整理する」方向に持っていきたい家庭
- 図鑑的な読み方(分類・メーター・レベル)が好きな子
感想
第3巻は、ピンチの紹介だけでなく、「うっかり」に光を当てたのが良かったです。子どもの失敗は、能力不足というより、注意が抜けた瞬間に起きることが多い。そこで“うっかり”を笑いながら扱えると、失敗は責められるものではなく、改善できるものになる。
ピンチを集めて笑う。ピンチを分析して納得する。ピンチの手前を見て、次を考える。シリーズがその順番で進化しているのがよく分かる一冊でした。
「うっかり」は誰にでも起きる、と先に言ってくれるだけでも、子どもの肩の力が抜けます。