レビュー
概要
『大ピンチずかん2』は、日常の「大ピンチ」を集めて分類する絵本の第2弾で、基本の面白さ(大ピンチレベル順の掲載、子どもの“あるある”の再現)はそのままに、分析の視点がさらに増えた一冊です。新要素として「大ピンチグラフ」が採用され、ピンチの原因を6つの要素から考える仕掛けが入ります。
つまりこの巻は、ただ「笑えるピンチ集」ではなく、ピンチを“分解して理解する”本になっています。たとえば同じ失敗でも、ドキドキするのか、イライラするのか、つらいのか。その違いが見えると、子どもは自分の感情を整理しやすくなる。大ピンチを小さくする方法として、かなり筋のいいアップデートです。
読みどころ
1) 「大ピンチグラフ」で、ピンチの種類が見える
第1巻のレベル・なりやすさに加えて、「このピンチは何が強いのか」を考えられるようになります。怖さの正体が、より具体になります。
2) ピンチの幅が広がり、生活の“盲点”が刺さる
たとえば「おきられない」「やっぱり さむかった」のように、失敗というより“体感のズレ”がピンチになる回が面白いです。子どもは自分の身体感覚に振り回されやすいので、ここに共感が集まります。
3) 「そっくり大ピンチ」で、似ている怖さが連鎖していく
「ストローが取れない」から、「アイスのスプーンが折れた」「ラーメンのレンゲが沈んだ」といった関連ピンチへ広がる構成があり、図鑑としての快感が強い。子どもはこういう連想で盛り上がります。
本の具体的な内容
この巻でも、大ピンチはレベルの小さいものから順に登場します。読者は「軽いピンチ」から入れるので、いきなり怖くなりすぎない。そこに加わるのが大ピンチグラフです。たとえば同じ“失敗”でも、恥ずかしさが強いのか、焦りが強いのか、痛みが強いのか——そういう違いがグラフとして見えると、ピンチの“顔”が変わります。
紹介される大ピンチは、相変わらず日常に近いものが中心です。「おきられない」は、時間に間に合わない焦りと、身体が動かない絶望が混ざるピンチで、子どもでも大人でも身に覚えがあります。さらに「充電ができていなかった」「お湯がない」など、生活の当たり前が崩れるタイプのピンチも出てきます。ここが第2巻の面白さで、ピンチは“子どものミス”だけではなく、“環境の不意打ち”としても現れると示してきます。
そして「ストローが取れない」の回のように、1つのピンチが別のピンチを呼ぶ構成が強いです。ストローが取れないだけなら小さな問題に見える。でも、似た状況(スプーンが折れる、レンゲが沈む)を思い出すと、「あるあるの連鎖」が起きる。怖さは、単発より連鎖の方が増幅する。本書はその連鎖を、笑いながら可視化します。
また「ごはんつぶを ふんだ」「外でズボンのゴムが切れた」といった、外で起きるタイプのピンチが混ざってくるのも効いています。家の中の失敗は立て直しやすいけれど、外のピンチは“逃げ場がない”感じが強い。こうしたピンチを先に知っておくだけで、子どもは心の予行演習ができます。
大ピンチグラフの使いどころも、まさにここです。「何がいちばん嫌だった?」を、言葉だけで聞くのは難しい。けれど図があると、「ここが高い」「これは低い」と指差しで話が始まる。ピンチの正体が、痛みなのか、恥ずかしさなのか、焦りなのかで、声のかけ方も変わります。第2巻は、読み聞かせが“相談の練習”に変わるところまで設計されているのが強いです。
読み方としておすすめなのは、まずは普通に声に出して笑い、次に「このピンチはどんな気持ち?」を一言で言ってみることです。「おきられない」は焦り、「ストローが取れない」はじれったさ、というように短い言葉で置き換えるだけでも、ピンチは整理されます。第1巻の“レベルで遊ぶ”楽しさに、第2巻の“気持ちを分ける”楽しさが重なり、シリーズが一段深くなった感覚がありました。
類書との比較
第1巻が「ピンチのカタログ」だとすると、第2巻は「ピンチの分析書」に近いです。大ピンチグラフという見える化があることで、怖さや嫌さの種類を言語化しやすくなる。感情の説明が難しい年齢ほど、この仕掛けは効くと思います。
こんな人におすすめ
- 第1巻が好きで、もっと“あるある”を増やしたい家庭
- 子どもがピンチに直面したとき、気持ちの整理を手伝いたい人
- 図鑑的な「分類・連想」が好きな子
- 読み聞かせを「会話のきっかけ」にしたい人
感想
第2巻を読んで一番良いと思ったのは、「ピンチの原因は1つではない」という視点を、子ども向けに翻訳していることでした。ドキドキなのか、イライラなのか、つらいのか。言葉で言えると、ピンチは少し小さくなる。大ピンチグラフは、その言い方の補助輪になります。
第1巻が“笑って終わる”強さだとしたら、第2巻は“理解して落ち着く”強さが増えた印象でした。家に1冊置いておくと、ピンチが来たときにページをめくるのが習慣になりそうです。