レビュー

概要

『チェンソーマン 2』は、公安の“犬”として戦うデンジが、圧倒的な欲望を原動力にしながら、コウモリの悪魔と激闘を繰り広げる巻です。欲望の内容があまりにも直球で、「胸を揉む!!」と明言される。ここがまず強い。目的が崇高ではない。だからこそ、戦いの熱が変な方向に歪む。その歪みが面白いです。

さらに、マキマが語る人類の敵「銃の悪魔」が登場し、物語は新たな局面へ入ります。欲望で走る個人の戦いが、より大きい戦争の匂いとつながっていく。1巻の勢いを保ったまま、世界の恐ろしさを上積みするのが2巻です。

読みどころ

1) 欲望が、エンジンであり呪いでもある

デンジは欲望で動きます。分かりやすい。けれど分かりやすいほど、相手に利用されやすい。2巻は、欲望が推進力になる瞬間と、首輪になる瞬間を並べて見せます。

2) コウモリの悪魔戦が、世界観の残酷さを濃くする

悪魔との戦いは派手です。ただ派手さだけで終わらない。戦いの果てに掴むのは胸なのか。別の何かなのか。欲望が叶うほど、別の痛みが増える。そんな残酷さが残ります。

3) 銃の悪魔という“規模”が、物語の地平を変える

人類の敵が語られるだけで、危険の桁が上がります。デンジの個人的な動機が、世界の暴力へ接続される。ここで読者は、笑っていいのか分からないまま引っ張られます。

本の具体的な内容

2巻の中心は、デンジの欲望と戦闘が直結している点です。「胸を揉む!!」が目的です。普通は冗談で終わる。ところが本作は、目的の軽さが戦闘の重さを引き立てます。軽い目的で死線を越える。だから、読後に残る感情が単純になりません。

コウモリの悪魔との激闘は、まさにその象徴です。チェンソーという暴力の形は派手です。戦い方も綺麗ではない。デンジは英雄ではない。生存のために、欲望のために戦う。ここを曖昧にしないので、バトルのカタルシスが“汚れ”と一緒に残ります。

そしてマキマの語る「銃の悪魔」が、物語の空気をさらに冷やします。デンジの戦いは、目の前の悪魔を斬る話では終わらない。もっと大きい敵がいて、もっと大きい犠牲があり得る。その予告が入ることで、2巻は導入ではなく「方向づけ」になります。

また、マキマの存在が怖い。指示は淡々としている。優しさも見える。けれど、デンジの欲望をよく理解しているからこそ、支配の形が見え隠れします。欲望が強い人は操りやすい。そういう現実が、物語の裏側にあります。

2巻で増える緊張

コウモリの悪魔戦は、戦闘として派手です。けれど「勝てば終わり」とは言い切れない後味が残ります。欲望がある。だから戦う。戦える。ここまでは分かりやすいです。問題は、欲望が叶った後です。満たされた瞬間に別の飢えが出る。2巻は、その残酷さを匂わせます。

さらに銃の悪魔の話が入ることで、個人の欲望が“世界の暴力”と隣り合います。デンジの目的は小さい。敵は大きい。この不釣り合いが、面白さと不安を同時に増やします。

類書との比較

欲望を語る主人公は珍しくありません。ただ、本作は欲望を“肯定”も“否定”もしません。欲望は動力です。動力は事故も起こす。だから読後に残るのは爽快感よりも、不安と熱です。

こんな人におすすめ

  • ダークなバトルでも、主人公の動機が歪んでいる作品が好きな人
  • 欲望と暴力が結びつく物語に惹かれる人
  • コメディと残酷さが同居する作品を読みたい人
  • 物語が大きい局面へ切り替わる巻を味わいたい人

注意点

暴力描写が前提です。欲望の描き方も露骨です。軽い気分で読むと温度差があるかもしれません。

感想

この2巻を読んで強く残ったのは、欲望が“正直”であるほど怖いという感覚でした。デンジの目的は笑える。けれど笑えるからこそ、利用される可能性が濃い。しかも敵は悪魔だけではない。マキマの言葉の静けさが、世界の冷たさを補強します。欲望で走りながら、世界の暴力に巻き込まれていく。その加速が、2巻の面白さでした。

2巻は「欲望の達成」がゴールではなく、入口として置かれます。掴んだ瞬間に、もっと欲しくなる。満たされたはずなのに、まだ足りない。こういう欲望の連鎖が、デンジを前へ押し出す。押し出し方は危なっかしいです。そこがこの物語の魅力です。

また、銃の悪魔の話が出ることで、世界の恐怖が“個人の外側”へ広がります。個人の欲望は小さい。世界の暴力は巨大です。この差があるから、読者も先を想像してしまう。笑いながら背筋が冷える巻でした。

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    佐々木 健太

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