レビュー
概要
『ジョジョの奇妙な冒険 1』は、ジョースター家の青年ジョナサン・ジョースター(ジョジョ)と、養子として迎えられたディオ・ブランドーの出会いから始まる、因縁の物語の発火点です。舞台は19世紀末のイギリス。貴族の誇りと、貧民街から這い上がる野心が、同じ屋根の下で衝突します。
第1巻の強さは、最初から「悪」が濃いことです。ディオは魅力的で、頭が切れて、容赦がない。ジョジョは真っ直ぐで、正しい。でも正しさだけでは勝てない局面があり、その現実が早い段階で突きつけられます。ここから“奇妙な冒険”が始まる、という入口として完璧です。
読みどころ
1) ディオの悪が、目的として描かれる
ディオはただ意地悪をするのではなく、ジョースター家を乗っ取るために動く。だから手段が計画的で、恐ろしい。第1巻は、この悪の設計図の時点でもう面白いです。
2) ジョジョが「負けながら前に進む」
ジョジョは最初から強い主人公ではありません。屈辱を受け、守りたいものを傷つけられ、それでも立ち上がる。ジョジョの“誇り”が、行動として積み上がっていきます。
3) 石仮面が、物語を一気に異常領域へ引きずり込む
第1巻で提示される「石仮面」は、ただの小道具ではなく、世界のルールを変える装置です。人間同士の争いが、超常へ接続する瞬間がある。そこがジョジョの入口として強いです。
本の具体的な内容
物語の始まりは、ジョースター家にディオが引き取られるところからです。ディオは表面上は礼儀正しく見せながら、内側ではジョジョを徹底的に追い詰め、支配しようとします。幼い頃の些細な屈辱が積み重なり、やがてジョジョの人生そのものが揺らいでいく。ディオの“やり口”がえげつないから、読者もジョジョと一緒に怒りを溜めていく構造になっています。
また、ジョジョが守ろうとするのは自分のプライドだけではありません。家族、犬のダニー、そしてエリナのような“弱い立場”の人たち。ディオはそこを狙い、ジョジョの誇りを壊そうとします。ジョジョは何度も負けますが、そのたびに「負け方」が変わる。正義を叫ぶだけから、現実に踏み込む方向へ変わっていきます。
そして、物語の鍵として石仮面が登場します。最初は古代の遺物のように置かれているのに、ある出来事をきっかけに“禁断の力”として動き始める。人間の野心が、超常の装置と噛み合った瞬間に、物語は取り返しのつかない領域へ入る。第1巻は、そこまでを強烈なスピードで見せます。
第1巻の中でも強烈なのは、ディオが「ジョジョから奪う」ために手段を選ばない点です。犬のダニーを焼き殺すような残虐さ、エリナを傷つけるような行為でジョジョの誇りを折りに来る執念。ここまでやる悪役を、しかも物語の序盤で全開にしてくるから、読者は一気に引きずり込まれます。
そしてジョジョも、ただ殴り返す主人公ではありません。父を守るために、ディオの企みを疑い、証拠を集め、危険な場所へ自分から踏み込む。上流階級の家で育った青年が、下町の荒っぽい世界に足を踏み入れることで、物語のスケールが横に広がります。ここでスピードワゴンのような人物が絡むことで、「家の中の争い」が「街の暴力」へ接続していく。この接続が、第1巻の推進力です。
シリーズ内での位置づけ
『ジョジョ』は部(Part)ごとに主人公も時代も変わり、雰囲気も大きく変化します。その中で第1巻(第一部の序盤)は、スタンド能力が前面に出る前の、かなり“血と因縁”寄りのドラマです。貴族の家、養子、遺産、誇りと復讐といった要素が濃く、物語の根っこにある「ジョースター家とディオの因縁」をここで刻みつけます。
後の部から入った人が読むと、驚くほど古典的な勧善懲悪に見えるかもしれません。でもその古典性が、ディオの異物感と、石仮面の超常性を際立たせる。奇妙さが生まれるための“土台”として、第1巻はよくできています。
こんな人におすすめ
- 勧善懲悪ではなく、因縁と執念の物語が読みたい人
- 強烈な悪役が出てくる作品が好きな人
- シリーズの“原点”を1巻から体験したい人
- 物語が一気に異常領域へ切り替わる導入が好きな人
感想
第1巻を読むと、ディオの悪が“怖い”を超えて“魅力”として残るのが分かります。悪が強いから、正義が試される。ジョジョは最初から勝てないけれど、誇りだけは折れない。その誇りが、後の物語の血脈になる。シリーズの伝説はここから始まったんだと納得できる導入です。
石仮面が出てきた瞬間に、物語が現実の喧嘩から「神話」へ跳ぶ感覚も痺れました。第1巻は、ジョジョという長い因縁の物語の“火種”として、完成度が高すぎると思います。
あえて言うなら、この巻の面白さは「バトルの技」より「人間の執念」にあります。ディオは勝つために徹底し、ジョジョは守るために徹底する。その徹底のぶつかり合いが、ページをめくらせる。シリーズの入口として、いま読んでも十分に強い“古典の熱”がある1巻でした。