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レビュー

概要

『怪と幽 vol.013 2023年5月』は、「お化け好き」に向けたエンターテインメント・マガジン『怪と幽』の13号です。単なるホラー小説誌ではなく、怪談・幻想文学・特撮・民俗学・漫画などを横断し、「怖さ」を作る文化と技術をまとめて味わえるのが特徴です。

今号は特集2本立てで、第一特集が「怪奇大特撮」、第二特集が「民俗写真家 芳賀日出男」。特撮は怪獣やクリーチャーの見世物に見えて、実際には災害や社会不安の象徴を“形”にしてきた歴史があります。芳賀日出男は、折口信夫や宮本常一の影響も受けながら、各地の文化・習俗を写真に残した唯一無二の存在です。ホラーの外縁に見える2テーマが、実は「人は何を怖いと感じ、どう記録し、どう語り継ぐか」という一点で繋がります。

雑誌形式の良さは、視点の切り替えが速いことです。小説や評論を一冊で読み切る体力がなくても、記事単位でつまみ食いできます。逆に、好きなテーマに当たる号を1冊持っておくと、趣味の地図が一気に広がる。そういう“ハブ”として強い号だと感じました。

読みどころ

1) 「特撮」を“怖さの工学”として読み直せる

特撮は子ども向けのヒーロー番組だけではありません。怪獣映画やホラー表現、SF的な想像力まで含めると、今やエンタメの主役級です。今号の特集は、特撮を「何が怖いか」ではなく「どう怖く見せるか」の観点で辿れます。ミニチュア、着ぐるみ、光、煙、音。古い技術の蓄積が、現代の映像の感覚にも繋がっている。ここを言語化してくれるのは、読み物として価値があります。

2) 怪獣・クリーチャーが「不安の象徴」になる仕組み

怪獣は単なる敵役ではなく、災害や社会問題の比喩として機能してきました。つまり“見えない不安”を、見える形に変換する装置です。この視点を持つと、過去の作品が「古い」ではなく「当時の怖さの記録」として読めるようになります。特撮を趣味として消費するだけでなく、社会の温度を測る指標として扱えるのが面白いところです。

3) 芳賀日出男の写真が「記録」であり「物語」になる

第二特集の芳賀日出男は、民俗の現場を写真で残した人です。写真は客観的な記録のように見えます。しかし実際は、何を撮り、どこでシャッターを切るかに意思が出ます。芳賀の写真は、景色だけでなく人の息遣いまで閉じ込める。結果として、失われた風景を“怖いほど生々しく”呼び戻します。怪談が語りで残すものを、写真が別のやり方で残している感覚があります。

4) 「怪談/特撮/民俗」を横断する読み方ができる

怪談の素材は、民俗や生活の隙間に生まれます。特撮は、その隙間に視覚と音で形を与えます。写真は、隙間の手前にある現実を固定します。今号を通して読むと、この3つが連続した線として見えてくる。ジャンルをまたいで「怖さの正体」を捉えたい人には、相性が良い構成です。

類書との比較

ホラー系の雑誌は、短編小説中心で読ませるものと、評論・文化記事で読ませるものに分かれます。『怪と幽』は後者の比率が高く、作品の“摂取”より「背景の理解」を強めてくれるタイプです。その分、純粋に怖い話を連続で浴びたい人には物足りない可能性もあります。

一方で、特撮や民俗を別々に追う雑誌・ムックと比べると、本誌は「怪異」という共通言語で接続してくれます。趣味の棚が分断された人ほど、横串の通る快感を得やすいです。

具体的な活用法(読みっぱなしにしない)

1) 特集ごとに「キーワード」を5つ拾う

雑誌は情報量が多いので、読後に印象が散りがちです。特撮特集から5語、芳賀特集から5語だけ拾ってメモします。たとえば「ミニチュア」「怪獣=象徴」「折口信夫」「宮本常一」「習俗」など。拾った語を起点に、次に観る作品・読む本が決まります。

2) 気になった特撮作品を“3点観測”で観る

特撮を観直すなら、(1)怪異のデザイン、(2)音・光の演出、(3)当時の不安の象徴、の3点で観測します。単に「怖い/すごい」から一段深くなり、感想が具体になります。レビューを書く人にも効きます。

3) 写真は「写っていないもの」も読む

芳賀日出男の写真は情報が濃いです。だからこそ、写っているものだけでなく、写っていないもの(撮影者の立ち位置、距離、視線)も意識すると読みが深まります。怪談を読むときの「語り手の距離感」と似ています。

4) 1冊を“参考文献の束”として扱う

雑誌は単体で完結させるより、「入口」として使うと回収率が上がります。今号で刺さったテーマを1つ決めます。関連作品を2本(映画やドラマ)選び、関連本も1冊用意します。次に動く。趣味の学習曲線が立ち上がります。

5) 自分の「怖い」の定義を1文にする

最後に、自分にとって怖いとは何かを1文で書きます。たとえば「見えない不安が、見える形になったとき」など。定義があると、次に何を読むかが迷いません。雑誌を“情報”ではなく“軸づくり”に変換できます。

こんな人におすすめ

  • ホラーを「作品」だけでなく「文化」として味わいたい人
  • 特撮を好きだが、怖さや象徴の視点で整理したい人
  • 民俗や写真に興味があり、怪談との接点を探している人
  • 雑誌のつまみ食いで、趣味を広げたい人

感想

特集2本がバラバラに見えて、読み終えると意外と一本筋が通っていました。特撮は不安を造形する技術で、写真は不安の手前にある生活を固定する技術です。どちらも「見えないものを見える形にする」という点で、怪談と同じ方向を向いている。だからこの号は、怖さを“鑑賞”ではなく“理解”に近づけてくれました。

怖い話を浴びたいときの一冊ではありません。けれど、ホラーの沼に長く潜りたい人にとっては、道具箱のような号です。特撮と民俗の両方に橋をかけられるので、次の行き先が増えます。回収率の高いムックでした。

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    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
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    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

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