レビュー

概要

『サイコメトラーEIJI 1』は、触れた物や人に残る記憶の断片を読み取る「サイコメトリー能力」を持つ高校生・EIJIが、事件捜査に巻き込まれていく推理サスペンスです。紹介文では、EIJIは17歳の高校2年生で、能力を知った刑事・志摩亮子が凶悪犯罪者「メビウス」の捜査協力を依頼する、とされています。

最初は乗り気でなかったEIJIが、知り合いが殺されたことをきっかけに本気で犯人を捜し始める。ここが1巻のエンジンになります。紹介文には収録話として「CASE.1 殺人鬼メビウス(1)〜(4)」が挙げられ、導入から事件の核へ入っていく構成が想像できます。

読みどころ

1) 異能が「万能」ではない形で、捜査の緊張を作る

サイコメトリー能力は、設定だけ聞くと強すぎます。でも、紹介文の言い方は「断片を読み取る」です。断片である以上、誤読や不足が起きます。

この不確かさがあるから、推理の緊張が残ります。能力があるのに、全部は分からない。分からないから、現実の証拠と人間の動きが必要になる。異能と捜査が噛み合うときに面白さが出ます。

2) 志摩亮子という「依頼者」が物語を現実へつなぐ

刑事が協力を求める、という導入は、主人公を一気に現場へ連れていきます。能力者が自分の生活だけで悩んでいる段階を飛ばして、事件が来る。

このテンポの良さは、1巻の読みやすさに直結します。事件が始まるまでが長い作品だと、導入で離脱しがちです。本作は「依頼」という形で、導入を短くしています。

3) 動機が「知り合いの死」で切り替わる

紹介文によると、当初のEIJIは協力に消極的だとされます。身近な死をきっかけに姿勢が変わる。主人公のスイッチが入る瞬間です。

推理ものは、主人公の動く理由が弱いと、事件は他人事に見えます。身近な出来事が動機になると、読者も他人事で読めなくなります。1巻としての引力が強くなります。

4) 1996年の「週刊少年マガジン」掲載作だと明記されている

紹介文には初出として「週刊少年マガジン」1996年18号〜21・22合併号掲載、とあります。作品の空気には時代性が出ます。

その時代性は、古さとして読むより、推理とエンタメの文法として読むと楽しいです。連載の速度、事件の見せ方、キャラの立て方。そうした設計を、1巻で体験できます。

CASE.1が「4話分」あるのは、導入を厚くするため

紹介文の目次は、CASE.1が(1)から(4)まで続きます。これは、1巻の中で「事件の核」をちゃんと見せるための配分だと思います。

推理ものは、導入だけで終わると「雰囲気」で終わります。一方で、事件の核まで踏み込むと、読者は続巻を追いかける理由ができます。CASE.1が4話分あるのは、その理由を作る設計に見えます。

異能推理サスペンスの「元祖」としての魅力

紹介文では、本作は異能推理サスペンス“サイコメトラー”ものの元祖で、シリーズ累計発行部数1200万部突破と書かれています。長く読まれた作品は、設定の面白さだけでなく、キャラが動く理由も強いです。

EIJIは高校生で、刑事から協力を求められる。ここに日常と事件のギャップがあります。そのギャップが、能力の説明より先に、物語を前へ押します。

また、紹介文には「原作者のペンネームは別なものを使用」と注意があります。作品の成り立ちを含めて紹介している点は、読者に誠実です。再編集版として読むときも、納得感が残ります。

読み方のコツ

この作品は、能力の設定を理解しようとして止まるより、事件の流れに乗ったほうが入りやすいです。能力は「断片」を読む。まずはそれだけ押さえて、何が断片として出てくるかを追うと、推理の手触りが残ります。

また、CASE.1が4回に分かれているので、章ごとに区切りがつきます。短い時間で読み進めやすい構成です。

サスペンスは、犯人探しだけをすると疲れます。そこで「EIJIが何を見て、何を確信できなかったか」を追うと、緊張が残ります。断片が増えるほど、判断が難しくなる。異能推理の面白さは、そこにあります。

もう1つは、志摩亮子がどの場面でEIJIを必要としたかを見ることです。能力があるから呼ぶ、という単純さではなく、捜査の詰まりが見えるはずです。詰まりが見えると、事件の輪郭もはっきりします。

類書との比較

  • 正統派の本格推理は、トリックや論理が中心になりやすいです。本作は異能という入口があり、論理の前に「見える情報」が増えるタイプです。
  • 超常能力バトルに寄った作品は、事件が勝負の舞台になりがちです。本作は捜査協力という形で、現実の事件の枠に寄せています。
  • 同じ作者陣の推理作品は、事件の構成力が魅力です。本作はそこに「触れて読む」という能力が加わり、見せ方に独自の色が出ます。

こんな人におすすめ

  • 推理ものが好きで、異能の要素も楽しみたい人
  • 事件のテンポが速い作品を読みたい人
  • 1巻で世界観と事件の核に入る漫画を探している人

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    高橋 啓介

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    佐々木 健太

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