レビュー

概要

浦沢直樹が1986年に描いた柔道物語の名作『YAWARA!』を、2014~2015年の完全版刊行以来再編集したデジタル特別版。古い週刊誌掲載時のカラーページを忠実に再現しながら20冊だった完全版を29冊へ再構成し、1巻には第1話から第14話のエピソードと劇場版・TVスペシャルの要素を織り込む形で、柔の成長と社会現象を同時に追う。10年単位で刷られるたびにアニメDVD付き豪華版が登場するなど、柔道ブームと併走したメディア展開も続いている。citeturn0search0turn0search2

読みどころ

  • 原作漫画とアニメのハイブリッドな展開が復活し、第1巻は柔の幼少期から国民栄誉賞を志すまでの文脈を一気通貫で再構成。伊調・谷・柔といった女性アスリートが当時の社会に風穴を開ける場面がカラーで再現され、柔の巴投げが視覚的にも音的にも迫ってくる。citeturn0search3
  • アニメDVD付き特別版(第1~4話)の発売に伴い、DVDに収録された黄金期のアニメ映像と漫画のシーケンスがリンクする構成が強調され、柔の技がまたたく間に社会現象となる様子を俯瞰で追える。citeturn0search2
  • 浦沢直樹が『MONSTER』『20世紀少年』で磨いた緻密なサスペンス脈が、柔の悩みや自省にも浸透しており、祖父の滋悟郎が柔を守るために政財界と交渉するシーンは、スポーツ漫画としての正統性に加え社会派の視座を併せ持つ。citeturn0search1

類書との比較

スポーツ×成長譚の金字塔として『火の鳥』や『SLAM DUNK』と並ぶが、『YAWARA!』は社会的なコンテストよりも「日常のスキルとアスリートへの欲望」のはざまに焦点を当てる。カラーページを再現した完全版により、かつて『ピンポン』で描かれた「揺らぎのスポーツ」感覚が再浮上し、プロフェッショナルな描写を保持しつつコミックの読解を楽しくする。citeturn0search3

こんな人におすすめ

女子スポーツの黎明期に興味がある読者、スポーツ漫画の黄金期を懐かしむ世代、そして浦沢直樹の柔らかな画力で日常と熱量が混ぜ合わせられている作品を再び味わいたい人向け。柔道の技術描写と競技会のスラム感が融合したグラフィックノベルが欲しい読者にも薦めたい。citeturn0search3

感想

完全版デジタルVer.1巻は、柔の成長曲線と周囲の登場人物たちが交差する構図を鮮やかに再現し、今読むことで「伝説として定着した女子柔道ブーム」の気配を再体験できる。DVD映像が付くことで、柔の巴投げのリズムがまるで現場で再生されるかのように感じられる。柔が抱える自己評価と報道の視線の間を何度も往復する描写には、スポーツ・ドキュメンタリーとしての緊迫感も宿る。citeturn0search2turn0search3

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