レビュー
概要
『死人の声をきくがよい』1巻は、特殊班が事件の現場で“死人の声”を聞き取ることで身体・記憶・時間を再構築していくミステリ。第1巻では、主人公の刑事が自分の意識を“臨界音”に合わせ、心拍と現場のノイズを同期させながら、凶悪事件の証拠をサンプリングする。
読みどころ
- サイレンが止んだ瞬間に、主人公の呼吸がピタリと収まる描写が特徴的。視線と呼吸のタイミングがずれたときに起きるリズムの乱れを、背景の線で強調して印象づける。
- 被害者の声を再構築するシーンでは、身体を浮遊させながら過去の動きをなぞる。手を伸ばす角度、足の踏み込み、過去に戻るような呼吸が、物理的に“聴く”ための術として描かれる。
- 図解的に提示される臨場感は、読者の神経を直接揺さぶる。身体に入る波長が筋肉に伝わり、テンポを刻むように場面が展開する。
類書との比較
死者と接触する設定は『ガイコツ書店員 本田さん』や『さよなら絶望先生』と異なり、こちらは身体的なリズムの再調整が焦点。サスペンスの時間を身体のテンポにして語っている。
こんな人におすすめ
- 現場のノイズと身体のリズムを同時に追いたいミステリファン。
- トラウマ的な体験と記憶の再構築を呼吸とともに描く作品が好みな人。
感想
1巻は、身体が誰かの声と呼吸を合わせることで、時間の侵入を止めにいくような感覚に満ちていた。