レビュー

概要

『封神演義』1巻は、古代中国・殷の王朝を舞台に、仙人界の計画「封神計画」を実行する太公望(たいこうぼう)の物語が動き出す導入巻です。
殷の紂王はもともと名君だったのに、仙女の妲己を皇后に迎えてから暴君へ変わり、国は乱れます。そこで崑崙山の教主・元始天尊が、悪の仙道を封じるために革命を進める計画を立て、弟子の太公望に託す。ここまでが、1巻でスパッと立ち上がります。

原作は中国古典『封神演義』です。この漫画はギャグや改変のテンポが早い。そこが特徴です。重い歴史ファンタジーになりそうな題材を、読みやすい速度で回してくれます。

読みどころ

1) 太公望が“正統派の英雄”ではない

太公望は、筋肉で押し切るタイプではなく、頭で状況をひっくり返す側です。
初動から「戦い方」が見えるので、バトル漫画としての手触りも早い。力の強さだけでなく、駆け引きや発想で勝負する気持ちよさがあります。

2) 妲己という存在が、物語の緊張を底上げする

妲己は、単なる悪役というより、世界のルールを歪める側の存在として出てきます。
暴君に仕立てる、混乱を広げる。その背後に仙界の力があることで、人間の戦いだけでは終わらないスケールが見えます。1巻は、その“怖さ”をちゃんと提示します。

3) 宝貝(ぱおぺえ)の設定が、戦いの面白さを作る

仙界の道具である宝貝があることで、戦いはただの武術ではなくなります。
道具の性能、使いどころ、相性。こういうゲーム性が早い段階で入ってくるので、続きを読むモチベーションが作られます。

1巻の魅力(神話のような話を、キャラクターの会話で読ませる)

殷周革命や仙界の話は、説明だけで読むと難しくなりがちです。
でも本作は、会話のテンポとノリで引っ張ってくれる。元始天尊の大局の話も、太公望の軽さを通すと、読者が置いていかれにくいです。

その一方で、世界の土台は重い。暴政があり、犠牲があり、革命が必要になる。
軽さで読みやすくしつつ、根っこは物騒。だから、ギャグが効いても緊張は消えません。1巻は、そのバランスが完成しています。

導入巻としての上手さ(敵の強さと、目的の大きさが両方見える)

1巻で提示される「封神計画」は、スケールが大きいのに、目的が分かりやすいです。
悪の仙道を神界に封じる。そのために革命を起こす。つまり、勝てば終わりではなく、勝ったあとに“封じる”作業がある。ここが普通のバトル漫画と少し違います。

さらに、妲己が早い段階で「話が通じない強敵」として見えてくるので、太公望側の苦戦も想像できます。
強さの種類が違う相手に、どう勝つのか。太公望の頭脳戦が効いてくる予感が、1巻の時点で作られています。

あと、古典由来の名前や固有名詞が出てきても、作品が読者の置いていき方をしないのが助かります。
言葉のノリで入れて、必要なところで意味が分かる。だから「難しそう」で引いてしまう前に、面白さが先に来ます。

こんな人におすすめ

  • 王道のバトル漫画を読みたいけど、会話のテンポも欲しい人
  • 神話や古典の要素入りファンタジーを楽しみたい人
  • ただの力勝負ではない、頭脳戦の気持ちよさが好きな人

感想

1巻を読んで感じるのは、「難しい題材を、こんなにポップに始められるんだ」という驚きです。
太公望のキャラが軽いぶん、世界の重さが逆に浮き上がる。妲己の怖さが際立つし、封神計画の無茶さも際立つ。笑えるのに、先が怖い。だから続きが気になります。

古典の名前や読み方に馴染みがなくても大丈夫です。1巻は、まずキャラの面白さで連れて行ってくれる。
その上で、後から世界の深さが追いかけてくる予感がある。導入巻として、強い引力がある1冊でした。

「計画」という言葉が出てくる時点で、太公望たちの戦いが長期戦になることも見えてきます。ここからどう広がるのかを追うのが楽しいです。

あと、1巻は“味方集め”の気配も強いです。太公望が1人で全部片づける話ではなく、人を惹きつけて、役割を振って、計画を前へ進める物語になっていく。
だからバトルの気持ちよさだけでなく、チームものの面白さも入ってきます。誰が仲間になり、誰が敵になるのか。1巻は、その予告編として十分に濃いです。

テンポよく笑えて、ちゃんと先が怖い。導入巻としてかなり完成度が高いと感じました。

古典の大枠を借りつつ、漫画としての読みやすさが強いので、まず1巻だけでも試し読みしやすいです。

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