レビュー

概要

『テラフォーマーズ』1巻は、火星の環境に適応した超人類「テラフォーマー」と戦うために、遺伝子操作と身体改造を敢行した特戦隊が送り込まれる序章である。人体は「機能ユニット」の再構築により、火星の強酸性気候・巨大昆虫と渡り合うためのテンプレートを獲得する。1巻では、主人公たちがなぜ超人的な皮膚や筋肉を要求されるのかを訓練と試験の連続で示し、肉体と意志の再帰的な整合が描かれる。

読みどころ

  • 訓練描写では、筋肉の爆発的な収縮が生理学的に表現される一方、隊員たちの心拍は感情の波として描かれる。作者はいわば「筋肉と感情の同期」をコマの小さな変化で示し、身体の再構築が心理的な変化と同時に進むことを印象づける。
  • 火星のテラフォーマーに直面したときの対処では、身体的な動きの動線が迷彩的に一枚ずつ分解される。読者はその動きのリズムを追うことで、自分の神経に「何が安全か」を再プログラムするかのような感覚になる。
  • 1巻後半の対話では、遺伝子操作への倫理問題がチーム内で議論され、肉体と社会的正当性の再調整が行われる。身体の強化が個人の価値観をどう揺さぶるかが描かれる。

類書との比較

身体と異形の変容を描く点では『寄生獣』や『寄生獣』のような作品と共振するが、『テラフォーマーズ』は生物学的な改造を「戦術的なデータ」として組み込む。敵の生態を解明しながら自分の身体を同じフレームへ当てはめる点で、『GANTZ』と似るところがあるが、こちらは人体の改造を体系的に索引することに余念がない。

こんな人におすすめ

  • 肉体改造と倫理の間を日常的に揺れるSFファン。
  • 生物学的な知見を戦闘に落とし込みながら読むことを好む人。
  • 戦略的な身体のアップデートと心理的不安の共振を探求したい人。

感想

1巻に流れるのは、「身体がコード化される」瞬間の連続であった。自身の筋肉がどのような角度で動くかを計算し、敵の動きをメタ認知するたびに、読者は自分の体温の位置を見つめ直す。科学と戦術の交差点で生まれる緊張感が、読みながら心拍を調律し直す感覚を呼び起こした。

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