レビュー

概要

『暗殺教室』1巻は、「担任教師を暗殺する」という強烈な課題を背負った生徒たちの物語です。舞台は、周囲の目が届きにくい離れ校舎のE組。生徒たちは、卒業までに担任を殺せなければならない。
この設定だけ聞くと、残酷なサスペンスに思えます。でも1巻が面白いのは、暗殺が“学校の授業”として日常に組み込まれていくところです。

担任は、生徒に銃口を向けられても平然としていて、むしろ教師として指導してきます。暗殺の技術だけではなく、勉強のこと、将来のこと、クラスの空気のこと。
「殺すべき相手が、いちばん自分たちを見てくれる」という矛盾が、1巻の段階で成立しているのが強いです。

読みどころ

1) サスペンスなのに、学園ものとしての手触りがある

E組という環境は、ただの舞台ではありません。
学校の中での序列や、外側から貼られたレッテルが、生徒たちの言動に影を落とします。その上で、暗殺という非日常が始まる。だから、物語がふわふわした設定勝負になりません。

2) 暗殺が「目的」ではなく「成長の装置」になっている

生徒たちは、ただ強くなりたいわけではありません。
見返したい、認められたい、居場所がほしい。暗殺の作戦や失敗が、そのままクラスの成長に繋がっていく構造が見えます。1巻は、その構造を読者に納得させるのが上手いです。

3) 先生のキャラクターが、怖さと面白さの両方を持つ

担任は、危険で、圧倒的で、簡単には勝てない相手です。
それなのに、授業が妙に分かりやすかったり、生徒の長所を拾ったりする。恐怖と信頼が同居するので、読んでいて感情が落ち着きません。この落ち着かなさが、続きを読みたくなる理由になります。

1巻の“授業”が気持ちいい理由(ルールが先に示される)

本作の導入が上手いのは、物騒な設定を感情だけで押し切らず、状況のルールとして提示するところです。
生徒が一斉に先生へ銃を突きつけるような衝撃の場面もありつつ、「ここは学校で、ここは教室だ」という空気も同時に残る。非日常と日常が重なった状態は、1巻の時点で出来上がっています。

暗殺の作戦は、気合いの勝負になりません。成功しない理由があり、失敗のパターンがあり、改善の方向がある。
だから、読者は「次はどうする?」を考えながら読めます。学園ものの“成長の気持ちよさ”が、暗殺という題材に繋がっているのが面白いです。

1巻の魅力(「倒したい」と「教わりたい」が同時に生まれる)

普通の学園ものなら、先生は味方です。
普通のサスペンスなら、敵は倒すべき相手です。『暗殺教室』は、そのどちらにも寄り切らず、「倒すべき先生」なのに「教わってしまう先生」を成立させます。

1巻では、暗殺が失敗に終わるたび、生徒たちの弱点や癖が浮き彫りになります。そこで先生が、上から説教するのではなく、戦略や学びとして返してくる。
このやり取りがあるから、生徒側にも「勝ちたい」だけではない感情が生まれていきます。敵なのに、嫌いになりきれない。その感情の複雑さが、1巻の時点で面白いです。

こんな人におすすめ

  • 設定の強さだけでなく、キャラの成長が見える漫画を読みたい人
  • 学園ものの熱さと、サスペンスの緊張を両方ほしい人
  • 先生と生徒の関係が一筋縄ではいかない物語が好きな人

感想

1巻を読み終えると、「暗殺の話なのに、教育の話でもある」と感じます。
生徒たちは、ただ追い詰められるだけではなく、暗殺という異常な課題を通して、自分の武器を見つけたり、仲間の価値を知ったりしていく。だから読後に残るのは、怖さより熱さです。

この作品は、物騒な設定を“人が変わるための環境”として使うのが上手い。
E組がこの先どうまとまっていくのか。先生をどこまで理解してしまうのか。1巻は、その長い物語のスタートとして、十分に強い引力がありました。

設定が強い作品ほど、キャラが記号になりやすい。でもこの1巻は、生徒たちの気持ちがちゃんと揺れます。
憎いはずなのに笑ってしまう。怖いはずなのに頼ってしまう。そういう矛盾を抱えたまま、日常が回り続ける。だから、読後に残るのは刺激より、人間関係の濃さでした。

1巻を読み終えた時点で、「暗殺がどうなるか」より「この教室の関係がどう変わるか」が気になってしまう。そういう引力のある導入です。

続巻で設定が広がっていく前に、まずこの1巻で“核”を掴めます。

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    佐々木 健太

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