レビュー
概要
『ボボボーボ・ボーボボ』1巻は、奇抜なパロディとリズムのような言語で「第七宇宙最強の髪型」を戦う主人公・ボーボボと、彼に続くエキセントリックな仲間たちのバトルを描く。ときに史実や格闘技用語を丸ごと飲み込んだギャグの連射、またときに古典的なバトル漫画の構成をパロディ化しながら、「髪の毛の力」でデータを逸脱するカオスな展開が続く。本作では「バトルとは意味を分解する作業」であり、読者の期待を裏切ることで新しい意味空間を作り出していく。
読みどころ
- ボーボボと敵将・マボロシとの遭遇では、対話が次第に「言語の破壊」へと向かう。両者が互いに常識的な用語を砕き、崩した破片を再構成する過程は、まるで意味生成の実験。つまり、戦闘とは「意味の再定義」という構図を持ち、相手の語彙をその場で組み替えていくことで勝利を得る。
- 特に「鼻毛真拳(はなげしんけん)」や「屁のツイスター」のように、身体の一部にフォーカスした技術は、身体認知のメタ化と相まる。鼻毛の伸縮を視覚的に可視化し、呼吸や身体感覚の再構築をユーモラスに提示するシーンは、伝統的な格闘技描写を再文脈化する。
- ギャグの中で挿入される学術的なアタリ(例:心理戦略、メディアリテラシーのバイアス)も、実は計算された構造。キャラクター同士の掛け合いでしばしば「もし○○なら」という仮説が立てられ、それが高笑いとともに破棄されることで、読者の推論コースを用意している。
類書との比較
本作の奇想天外な言語と身体感覚のずらし方は、『ギャグ漫画日和』や『斉木楠雄のΨ難』に通じるメタ構造と共振する。だが、あちらが比較的「言葉のセンス」寄りなのに対し、『ボボボーボ・ボーボボ』は「身体(鼻毛や屁)の捉え直し」にこそ強い。『究極!!変態仮面』や『ビリビリシスター』のような身体ギャグとも共通するが、そこに「意味の構造を分解する論理」が入り込むことで、コマンド的なギャグ戦略を生み出している。
こんな人におすすめ
- 言語をどう破壊し再構築するか、文字や身体のサンプルとともに見たい読者。
- 伝統的なバトル構造を崩壊させるメタパロディを愛する人。
- 体の一部を象徴的に扱いながら、社会的な常識を問い直すものに惹かれる人。
感想
1巻を読み通した後に残るのは、筆者が仕掛ける「意味のリフレイン」だ。ボーボボたちは戦うために技を使うのではなく、敵の持つフレームをひっくり返して、それによって新しい認知の回路を作る。その視点では、本作はギャグだけでなく「意味の断絶と再生成」を扱う理論的実験とも受け取れる。今後の巻でどこまでこの構造を破壊し続けるか、期待が尽きない。
- 言葉と身体に注目した意味再構築の場としてのバトル。
- 誤解を作ることで共同体の常識を緩めるセンス。
- 読者の思考を眩ませるリズムとテンポ。
- ギャグと実験精神が同居するカオスの設計。
常識を“鼻毛”で倒す発想の大胆さをたたえる、超現実の第一巻。