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レビュー

概要

『バジリスク ~甲賀忍法帖~』1巻は、徳川の世継ぎ争いを背景に、長く対立してきた甲賀と伊賀の忍者たちが、十人対十人の殺し合いへ追い込まれていく歴史バトルです。ただ忍者が戦うだけではありません。敵同士でありながら想い合う弦之介と朧の関係が最初から物語の中心にあるため、血なまぐさいのに単なる残酷競争で終わらない。宿命と恋愛が最初から正面衝突しています。

1巻の段階で強いのは、誰が勝つか以上に「この関係はどうやっても壊れるのではないか」という不穏さです。和平の可能性が見えた直後に、それを無慈悲に政治が踏み潰す。個人の願いより権力の都合が優先されるからこそ、忍者たちの死闘にも悲劇の色が濃く出ます。

読みどころ

  • せがわまさきの作画が、忍法の異形さと人物の色気を同時に立てている。美しさと気味悪さが同じコマにあるので、戦いの場面に独特の緊張が出ます。
  • 甲賀と伊賀の忍者たちが、顔見せの段階から一人ずつ強い個性を持っている。能力バトルものとしても、最初の巻からかなりわかりやすいです。
  • 弦之介と朧の関係があることで、勝敗の話がそのまま悲恋へつながる。アクションだけでなく感情面の引きも強いです。

本の具体的な内容

1巻では、徳川家の後継問題を処理するため、長く争ってきた甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆が再び対立へ引き戻されます。表向きは将軍家の判断ですが、読んでいると、当人たちの気持ちなどほとんど考慮されていないことがわかります。だからこそ、和平を願っていた弦之介と朧の立場が一気に痛ましくなるのです。

また、忍法の見せ方もかなり派手です。怪力や変身のような単純な能力ではなく、人体の仕組みや錯覚を極端に拡張したような術が多く、ひとつひとつに嫌な説得力があります。1巻の時点ではまだ全員の術が出揃うわけではありませんが、「この先どんな殺し合いになるのか」という期待と恐さを十分に作っています。

さらに、本作は戦いのルール説明がうまいです。十人対十人の忍者同士が命を賭け、最後に残った側が主家の命運を背負う。この構図がすぐ理解できるので、読者は難しい歴史背景を全部知らなくても入れます。そのうえで、ただのトーナメントや試合とは違い、一人死ぬごとに恋と運命の救いが減っていく。そこが強いです。

1巻の時点ではまだ全面戦争が本格化しきる前ですが、その「始まる前の不気味さ」がむしろ印象に残ります。誰がどの術を持ち、どういう因縁を抱えているのかが見え始めるだけで、読者は自然に組み合わせを想像してしまう。能力バトル漫画としての期待の作り方がかなりうまく、次巻以降の死闘を見たくさせる力があります。

類書との比較

忍者漫画や能力バトル漫画は多いですが、本作は「誰が強いか」だけでなく、「その勝利が誰をどれだけ不幸にするか」が最初から組み込まれている点が独特です。派手な忍法合戦でありながら、読後感はかなり悲劇寄り。そこが他のバトル作品とははっきり違います。

また、時代物として見ても、史実再現より物語の運命性を優先しています。そのため歴史漫画のような敷居の高さはなく、むしろロミオとジュリエット型の悲恋ものとして入りやすい。歴史、バトル、恋愛の3つが高い密度で混ざった作品です。

こんな人におすすめ

  • 忍者ものを大人向けの濃さで読みたい人
  • 能力バトルと悲恋の両方が好きな読者
  • 残酷さのある時代劇漫画を探している人
  • 1巻から強い引きがある長編を読みたい人

感想

1巻を読むと、この作品は残酷な忍者バトルを楽しむ漫画であると同時に、「どう考えても幸せになりにくい二人」の物語でもあるとわかります。そこが強いです。誰かが技を出して勝つたびに盛り上がるはずなのに、その勝利自体が痛い。だから戦闘シーンの派手さがそのまま切なさにもつながります。

絵の美しさ、設定の濃さ、悲劇の予感の3つが最初の巻から高い水準で揃っています。ダークで華のある時代バトルが好きな人にはかなり刺さる1巻でした。

忍者ものとして読んでも、恋愛悲劇として読んでも、政治に翻弄される集団劇として読んでも密度が高いです。古い名作として名前だけ知っている人ほど、実際に読むと画面の色気と残酷さの強さに驚くと思います。

1巻はまだ序章のはずなのに、すでに誰が死んでもおかしくない緊張が張りつめています。しかも、その緊張が単なる残酷さではなく、弦之介と朧の願いを壊していく方向へ働くので重いです。続きが気になるだけでなく、続きを読むのが少し怖くなる導入として非常によくできています。

悲恋ものとしての湿度と、能力バトルとしての派手さがここまで自然に両立している作品は多くありません。大人向けの濃い漫画を読みたい時に、かなり満足度の高い1巻です。

残酷さと気品が同居する導入巻として、完成度はかなり高いです。

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