レビュー

概要

『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』は、しんどいのに平気な顔をしてしまう人のための本です。私はこの本を読んで、「弱音を吐けない」のは気合いの問題ではなく、習慣と環境の問題でもあるんだと思いました。

大げさにポジティブへ持ち上げる本ではありません。むしろ、「大丈夫じゃない」をちゃんと認めるところから始まります。そこが良いです。元気がないときって、ありますよね。そういうとき、励ましの言葉がしんどく感じることもあります。本作は、しんどい人に無理をさせない温度で進みます。

読みどころ

1) 「平気なふり」の正体をほどいてくれる

大丈夫なふりをしていると、自分でも本当の気持ちが分からなくなります。本作は、そうなるプロセスを言葉にしてくれます。私は、気持ちに名前がつくと少し落ち着くタイプなので、ここが一番助かりました。

2) 具体の場面が多く、置き換えやすい

メンタルの本が苦手な人は、抽象的な言葉に疲れがちです。でもこの本は、生活の中の場面に寄っています。家族、職場、友人関係、SNS。日常で起こる「しんどさの積み重ね」が扱われるので、読みながら自分の生活に当てはめやすいです。

3) “回復のための小さい行動”が残る

私は、こういう本を読んでも「じゃあ何をしたらいい?」で止まることがあります。本作は、生活の中でできる小さな切り替えを提案してくれます。劇的に変えるより、まずは体力を戻す。その順番が現実的でした。

本の具体的な内容(ネタバレ控えめ)

この本は、読んで泣けるタイプというより、「あ、私これやってる」と気づくタイプです。気づくと、自分への扱い方を少し変えられます。

私は特に、我慢を美徳としやすい環境にいる人ほど、こういう本が必要だと思いました。頑張り続けると、ある日突然止まります。止まってから立て直すのは大変です。だから、止まる前に小さく整える。そのための言葉と視点が、この本にはあります。

合う人・合わない人

しんどいのに人に相談できない人、感情を言葉にするのが苦手な人に合います。私は、読書の体力がない日でも読みやすいと感じました。重いテーマでも、文章の温度がやわらかいからです。

逆に、心理学の理論やデータをがっつり読みたい人には、少し物足りないかもしれません。本作は研究書というより、生活の本です。

読み方のコツ

私は、一気読みより、しんどいところだけ拾い読みでもいいと思います。刺さる章がある日は、そこで止めて大丈夫です。読んだ直後に無理に前向きにならなくていい。むしろ、読みながら自分の体調を優先したほうが合います。

読後にやると落ち着くこと(1つだけでOK)

私は、こういう本を読んだあとに「よし、明日から変わろう」と気合いを入れると、逆にしんどくなることが多いです。回復って、気合いで作るというより、余白で起きるものだからです。

おすすめは、次の中から1つだけです。

  • 今日の自分に「よくやった」を1行書く
  • しんどかったことを“事実”だけで書く(評価は書かない)
  • 明日の自分を守るために、やらないことを1つ決める

これだけでも、「大丈夫なふり」を続けるモードから少し離れやすくなります。

「大丈夫」の範囲を小さくする

私はこの本を読んで、「大丈夫」を人生全体に適用しなくていいと思いました。仕事は大丈夫でも、睡眠は大丈夫じゃない。人付き合いは大丈夫でも、お金の不安は大丈夫じゃない。そうやって分解できると、助けが必要な場所は見えてきます。

大丈夫じゃない部分を認めるのは、弱さの告白というより、生活のメンテナンスです。私はここを“自分の取り扱い説明書”を更新する作業だと思いました。

「助けが必要」より先に言える言葉を持っておく

いきなり「助けて」と言うのは、難易度が高いです。自分でも何が起きているのか分からないし、言った瞬間に相手が困りそうで飲み込んでしまう。私はこの本を読んで、そういうときのために“手前の言葉”を用意しておくと楽になると思いました。

たとえば、「今日は会話の元気がない」「返信が遅くなるかも」「予定を詰めすぎたかも」。深刻な相談じゃなくてもいい。まずは状態を共有するだけでも、平気なふりの負担が少し減ります。大丈夫じゃない日を、無理に説明しなくていい。その代わり、短い言葉で境界線を引く。私はこれを、回復のための小さなマナーみたいに捉えました。

こんなときは、読むのを止めてもいい

この本は寄り添う温度ですが、読む側の状態によっては刺さりすぎることもあります。読みながら息が詰まる、涙が止まらない、体が重くなる、といった反応が出る日は、いったん閉じても大丈夫です。読むことが目的ではなく、回復が目的です。

注意(医療判断の代替ではありません)

気分の落ち込みや不眠、食欲の変化などが続いて生活に支障が出ている場合は、この本だけで抱え込まず、医療機関や相談先を頼ることも大切です。本作は助けになりますが、診断や治療の代わりにはなりません。

読むタイミング

私は、予定が詰まっている時期よりも、「なんとなくしんどい」が続いている時期に合うと思いました。大きな出来事がなくても、毎日の小さな無理が積もると、心と体がじわっと重くなります。本作はその“じわじわ”に言葉をつけてくれるので、早めに読むほど効きます。

逆に、今まさに限界の真ん中にいるときは、読めない章があっても大丈夫です。全部理解しなくていいし、途中で閉じてもいい。私は「読めるページだけ読む」が正解の日もあると思っています。

感想

私はこの本を読んで、「大丈夫じゃない」と言えるだけで、人は少し回復に向かえるのだと思いました。大丈夫なふりを続けると、周りも気づけません。でも、言葉にできると、助けが入りやすくなります。

頑張り屋ほど、こういう本が必要だと思います。強くなるための本ではなく、崩れないための本。そういう位置づけで読むと、すごく効きます。

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