レビュー
概要
『そして生活はつづく』は、星野源さんのエッセイで、派手な成功談というより「生活の手触り」が中心の本です。私はこの本、読んでいると気持ちが少し落ち着きました。大きい答えが欲しいときより、日常の温度へ戻りたい日に効くタイプです。
日々の仕事や体調、人付き合いのあれこれを、重くなりすぎない距離感で書いてくれます。真面目な話も出てくるのに、読後は息がしやすい。私はそのバランスが好きでした。
読みどころ
1) 生活の「小さい違和感」を言葉にしてくれる
忙しいときほど、違和感を見て見ぬふりしがちです。でも違和感は、放っておくと疲れになります。この本は、その違和感を軽く拾って、笑いに変えたり、少しだけ整理したりします。読者も一緒に肩の力が抜けます。
2) 文章が軽いのに、雑ではない
軽さだけのエッセイだと、読み終えたあとに何も残らないことがあります。でもこの本は、生活の温度が残ります。私はそれが、読み返したくなる理由だと思いました。
3) 「元気になれない日」を否定しない
エッセイって、ときどき前向きの圧が出ることもあります。でもこの本は、無理に上げません。通常運転に戻す感じです。私はここがいちばん助かりました。
本の具体的な内容(ネタバレ控えめ)
題材は日常のことが多いです。仕事のこと、街のこと、体のこと、気分のこと。どれも派手じゃないのに、読むと「分かる」と思う瞬間があります。生活って、だいたいそういう小さい出来事でできています。
私はこの本を読んで、生活の面白さって、イベントではなく“観察”のほうにあると思いました。予定がなくても、視点があると退屈にならない。そういう感覚が残ります。
笑いの質(元気より、体温)
この本の笑いは、勢いで押し切るというより、生活のズレをそのまま受け止めて笑う感じです。だから、元気がある日に読むと普通に面白いし、元気がない日に読むと少し救われます。
私は、エッセイの良さは共感で終わらず、自分の生活を少しだけ肯定できるところにあると思っています。本作は、その効き方が強いです。
類書との比較
有名人のエッセイは、自己演出が強くなりすぎると読者との距離を感じやすいです。でも本作は、等身大の温度が残ります。憧れより「生活の友達」っぽい読み味です。
こんな場面で効く
- 仕事の波に飲まれて、生活が雑になっているとき
- 真面目な本が続いて、頭が疲れているとき
- 予定がない日に、気分を整えたいとき
こんな人におすすめ
- まじめな本が続いて疲れている人
- 生活を立て直したいけど、気合いが出ない人
- エッセイで気分転換したい人
- 読後にやさしい余韻の残る本が好きな人
合う人・合わない人
自己啓発っぽい結論や、強いメッセージを求める人には、少し静かに感じるかもしれません。私は「静かでいい」と思えるときに読むのが合う本だと思いました。
逆に、生活の些細な話が好きな人、短い時間で読書をしたい人にはぴったりです。1話で止められる強さがあります。
読み方のコツ
私は、疲れている日は1話だけ読むのがおすすめです。エッセイは区切りやすいので、気持ちの体力に合わせられます。気に入った話だけ、あとで読み返せるのも強いです。
私はこの本、読み終えるより「繰り返し開く」ほうに価値が出ると思いました。元気な日に読むと笑えるし、しんどい日に読むと安心します。生活のコンディションで効き方が変わります。
読み返しポイント
私は、この本を読み返すとき「好きな話を探す」というより「いまの自分に効く話を探す」感覚になります。気分が落ちている日は、言葉がやさしい話に目が行く。忙しい日は、短くてテンポのいい話を選ぶ。エッセイの強さって、読む側の状態に合わせられるところだと思います。
生活に持ち帰れること(小さくて現実的)
私はエッセイを読むとき、「参考になることを持ち帰ろう」と気合いを入れると、逆に何も残らないことがあります。この本は、持ち帰り方を小さくしても成立します。たとえば、読み終えた日にやれることはこれくらいで十分です。
- いつもより丁寧にお茶をいれる
- 散らかった机を、見える範囲だけ片づける
- 今日は無理な予定を1つ減らす
生活って、劇的に変わるより、少し整うくらいが効く日もあります。本作は、その「少し整う」方向へ、押しつけずに連れていってくれます。
合う季節・合わない季節
私は、忙しさがピークの時期ほどこの本が合うと思いました。読むことで解決するというより、生活の温度が戻るからです。逆に、テンションを上げたいときや、刺激が欲しいときは物足りないかもしれません。そういう日は、もっと勢いのあるエッセイや小説のほうが合います。
感想
この本を読んで、生活が劇的に変わるわけではありません。でも、生活を嫌いになりにくくなります。うまくいかない日も含めて「まあ、つづくよね」と思える感じが残ります。
元気が出るというより、力が抜ける。私はそういう本を、たまに読みたくなります。忙しい時期にこそ相性がいいエッセイでした。
読み終えたあと、生活の中の小さい出来事を、少しだけ面白がれるようになります。私はその変化が嬉しかったです。
エッセイって、人生を変えるためのものというより、人生を続けるためのものだと思います。この本は、その役割をちゃんと果たしてくれました。
私は、読み終えたあとに「今日の生活も悪くない」と思えたのが一番の収穫でした。