レビュー
概要
『週刊少年マガジン』連載の大作恋愛コメディ。問題児の山田竜と、優等生の白石うららが緊急退学寸前の事故で身体をスワップしたことをきっかけに、朱雀高校に伝わる“キスで魔女の能力を受け継ぐ”儀式の真相に踏み込んでいく。入れ替わりの伏線と共に、好奇心とエロティシズムが同居するボーイミーツガールのテンポが、学園・ミステリー・SFといった様々なジャンルのバラエティをつなぐ。山田が運動部のトレーニングを使って“魔女狩り”に臨む部分では、身体性をベースにした駆け引きも味付けされている。
読みどころ
うららの“記憶と感情を共有する魔女”の能力を土台にしつつ、山田の平凡さを「キスした相手の能力をトレースする」「学園のルールを一度に覚え直す」といったメタ的な工夫でエネルギーを生む。第2部以降は白石の能力を分散した7人の後輩とパートナーを組ませることで、複数の視点から“魔女のルール”を解き明かすロジックパズルへと展開。山田が証明するべき最終的な命題は「心の共鳴こそ魔女を超える力」であり、そのドラマが物語全体に一定の科学的緊張感を与えている。
類書との比較
学園ラブコメでは『ニセコイ』が偽恋を用いて人間関係を揺さぶるが、『山田くん』は“魔女の能力”を数学的・心理的に分解して物語を構築する。『僕らは奇跡でできている』のような優等生と問題児の最終的な理解ではなく、『ReLIFE』的に時間の取り戻しと認知の再調整がテーマになっている点が違う。『7つの大罪』のような奇異な能力闘争よりも、日常の校舎に篭った神話的な仕掛けと“キスで交換される記憶”が本作の核だ。
こんな人におすすめ
- キスのトリックを推理で味わいたいラブコメ愛好家
- 身体を使った学園バトルに知的正解を求める読者
- 異なる能力を「数式」に見立てる発想で知性を刺激される人
- キャラクターごとの心理的成長を追うキャラオタ型
感想
魔女の力を“誤解しない”ことがテーマで、慣れない能力を噛み砕いていく場面に、科学的思考のノリを感じる。能力の定義を“物理的な接触”“逆伝播する感情”“再現可能な儀式”として語り直すことで、アオリス・ケミカル的な説得力を得ている。最終的には“キス”という単純な行為を、チームのデータ収集と仮説検証のプロセスに落とし込むことで、学園内の秩序と個人の自由という二律背反をきれいにまとめていた。