レビュー
概要
不登校・ブラック企業でうつに近い状態となった27歳・海崎新太が、生活改善と再社会化を目的とした「ReLIFE実験」の被験者として高校生の見た目に戻されるという異色の青春漫画。研究所から“リライフ”用の薬を一日ごとに受け取りながら、同級生と普通の学生生活を送るよう指示された海崎の苦悩と成長が、美しいフルカラーで描かれる。
読みどころ
第一巻では、社会的不適応によって低下した自尊感情を抱える主人公に寄り添いながら、安心感・自主性・能力感というSelf-Determination Theoryでいう3要素を少しずつ取り戻す過程を丁寧に追っている。臨床心理士の報告書モチーフで「今日のスケジュール」「得た報酬」「躓いた点」が手帳風に挿入され、読者も実験データのように進捗を追える工夫がある。バンドメンバーのようにスモールステップで人間関係を再構築し、「教室での雑談が『任意』である」ことを再発見する場面が繰り返され、内発的動機づけの3要素(自律感・有能感・関係性)がバランスよく満たされていく様子が描かれる(doi:10.1037/0003-066X.55.1.68)。この部分の描写は学術論文の言葉を借りて言えば、ReLIFEの設計は実証研究に裏打ちされた期外実験と同じ構造をとっている。
類書との比較
時間軸をいじる作品としては『僕だけがいない街』や『orange』が思い浮かぶが、ReLIFEは“人生をもう一度やり直せる”という理想をプログラムで制約する点が異なる。『僕だけ』が失われた時間を補償するためのトラウマ解消を描いたのに対し、ReLIFEは「明日も隣席の田中と自然に会話する」ような細かな目標を積み上げる点で、社会リハビリテーション寄りの趣がある。『orange』のような時間の波動ではなく、「今ここ」での行動が連続していくリハビリケーススタディとして読み込めるところが、本作の差別化ポイントだ。
こんな人におすすめ
- 社会人の転機や燃え尽き症候群を描いた物語に慰めを求める人
- 研究所の実験的な設定が好きで、心理学的用語が物語に溶け込む描写をもっと味わいたい人
- 自律性・関係性・能力感の三位一体を再発見したい人
- フルカラーならではの空気感と、モノローグが多い現代的な青春を味わいたい人
感想
実験室のモニターと海崎の内面が並行して提示される演出は、読者が「社会復帰シナリオ」を自分ごととしてシミュレーションするきっかけになる。フルカラーで高校の午後の陽射しが差し込む描写は、現代の社会で疲弊した目にとって“あの頃の日差し”そのものだ。次巻で医療スタッフや友人たちのサイドストーリーが膨らむと、たぶん今よりも強く「社会的繋がりとは何か」という問いに突き当たるはずだが、第1巻だけでも再スタートに必要な勇気の出し方が学べる。