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レビュー

概要

『ReLIFE』1巻は、27歳で社会からはみ出しかけた海崎新太が、外見だけ10代に若返る実験へ参加し、もう一度高校生活を送るところから始まる作品です。設定だけを見ると”人生やり直し”のファンタジーですが、読んだ印象はむしろかなり現実的です。学校に戻れば何でもやり直せるわけではなく、傷ついたままの大人が教室に混ざったとき、何が苦しくて何が救いになるのかを丁寧に追っていきます。

海崎は大人の知識と失敗経験を持ちながら、精神的にはまだ整理のついていない人物です。だから同級生の中に入っても万能にはなりません。むしろ就職や職場でつまずいた経験があるぶん、人との距離の取り方に臆病で、空気の読み方もどこかずれています。この”大人なのにうまくできない”感覚が、ただの学園コメディとは違う手触りを生んでいます。

内容とポイント

1巻で特に効いているのは、海崎が高校生の集団に入っていくときのズレ方です。大人として見れば当たり前に見えることでも、学校という閉じた空間ではうまく通じない。逆に、社会人経験があるからこそ、教室で起こる小さな傷つきや力関係がよく見えてしまう。海崎は”もう一度青春を楽しむ”主人公というより、教室という環境を外から知っている人物としてそこへ戻ってくるので、同じ学校シーンでも見え方が変わります。

また、序盤から人間関係の組み立てがとても丁寧です。最初から大親友ができたり恋愛が大きく動いたりするのではなく、自然に挨拶が返ってくる、勉強を教える、失敗を笑って共有するといった小さな接点が少しずつ増えていく。社会で一度つまずいた人間にとって、関係の作り直しが一気に進むものではない。その感覚がちゃんと入っています。

さらに、本作は高校生たちを単なる背景にしていません。クラスメイトたちもそれぞれ不器用で、真面目すぎる者もいれば空回りする者もいて、うまく人に頼れない人もいる。海崎は彼らを「若いから青い」と見下ろすのではなく、自分にも似た未熟さとして受け止めていきます。ここが本作の優しいところで、若さを美化もしなければ、大人を正解にもしていません。

フルカラー版で読む意味も大きいです。制服や教室、放課後の空気、駅前の色味が入ることで、学校生活の温度がぐっと伝わりやすくなります。青春のきらめきが増すだけでなく、海崎がまだそこに馴染みきれていない違和感も、色があるぶんいっそう目立つ。見た目の若返りと中身のズレを、フルカラーのほうが直感的に感じやすいと思いました。

この本の良さ

この作品のよさは、やり直しを「過去の修正」ではなく「現在の再起動」として描くことです。海崎がほしいのは高校時代の思い出ではなく、もう一度社会に戻るための足場です。そのため、1巻の時点から学校生活の楽しさと同じくらい、働くことへの恐れや適応のしんどさがにじみます。青春漫画としても面白いのに、土台にはかなり切実な再起の物語があるわけです。

もう1つは、主人公だけが成長する構図にしていないことです。海崎は他人を助けることで自分の見え方を変えていきますし、逆に他人の素直さに救われてもいきます。誰かを導く大人としてふるまうのではなく、混ざり合いながら少しずつ回復していく。そのバランスがあるから説教くさくならず、読者も自然に海崎の変化を追えます。

こんな人におすすめ

  • 学園ものが好きだが、少し大人向けの苦さもほしい人
  • 仕事や人間関係で一度つまずいた経験がある人
  • やり直しものの設定は好きだが、ご都合主義すぎる展開は苦手な人
  • 青春漫画を読みたいけれど、感情の機微を丁寧に追う作品を求めている人

派手な逆転劇より、少しずつ関係と自己認識を作り直していく話が好きな人に向いています。青春漫画が苦手な大人でも入りやすいタイプです。

感想

読んでいていちばんよかったのは、海崎が「人生をやり直せる特別な主人公」に見えないことでした。むしろ、機会をもらってもすぐには変われないし、若い集団の中で妙にぎこちない。その不器用さがあるから、少しずつ馴染んでいく過程がちゃんと効いてきます。

1巻の時点ではまだ大きな解決は起きませんが、それでいいと思わせる強さがあります。教室に戻ることは、過去を取り返すことではなく、今の自分を少しずつ扱い直すことだと伝わるからです。特殊な設定を使いながら、ここまで実感のある再挑戦の話にしているのはかなりうまいです。

読み終えると、高校生活をうらやむというより、「人は環境が変わっても結局は対人関係と自己理解で苦労するのだな」と妙に納得させられます。その現実味こそが『ReLIFE』の魅力でした。

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    佐々木 健太

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