レビュー

概要

『くじけないで』は、柴田トヨさんの詩集です。落ち込んだときに読む「励ましの本」は世の中にたくさんありますが、この本の良さは、押し上げる感じがあまりないところだと思いました。

読んでいると、背中をどんと叩かれるのではなく、湯たんぽを抱えたみたいに体温が戻る。そういう効き方です。

言葉はやさしい。けれど、甘いだけでもない。人生を長く歩いてきた人の言葉って、飾りが少ないぶん、まっすぐ残るんですよね。私にとってこの本は「元気を出すため」より、「息を整えるため」に置いておきたい一冊でした。

読みどころ

1) 短い言葉だから、心に入りやすい

この本の詩は、長く説明しません。だからこそ、疲れている日に読めます。

落ちているときって、長い文章を読む体力がない。言葉が多い励ましほど、「そこまでできない」と感じてしまうこともあります。その点『くじけないで』は、数行で気持ちの芯に触れてくる。読み手の体力を奪わない優しさがあると思いました。

2) 「できたこと」に目を向ける距離感がリアル

自己肯定感って、いきなり高くならないですよね。 無理にポジティブになると、反動が来る日もある。

この本がくれるのは、ジャンプする前の小さな足場です。「今日もよくやった」「ここまでで十分」と、地面に戻してくれる。私はそれが好きでした。

3) 年齢や立場に関係なく刺さる「孤独」の扱い方

人生って、誰かと一緒にいても孤独な瞬間があります。 むしろ、元気なふりが上手い人ほど、ひとりの時間に崩れる。

『くじけないで』は、そういう孤独を「悪いもの」と決めつけません。孤独を抱えたままでも、生活は続く。その現実に寄り添う感じがあって、読後に変に取り残されないんです。

合う人・合わない人

合うのは、こんな人です。

  • いま、気持ちが弱っていて長い本が読めない
  • 自分を責める癖があって、夜に反省会が始まりやすい
  • 「大丈夫」って言い続けるのに疲れた

逆に、具体的な行動テクニック(時間術、習慣化の方法)を探している人には、物足りないかもしれません。この本は「やり方」を教えるというより、心の位置を少し戻す本です。

読み方のコツ(毎日少しが効く)

私はこの本、まとまった時間に一気読みするより、1ページずつが合うと思いました。

詩って、読み返したときに効き方が変わります。昨日は何も感じなかった言葉が、今日の自分には刺さることがある。だから「寝る前に1つだけ」「通勤中に1つだけ」みたいに、小さく読むのが続きやすいです。

もう1つおすすめなのは、気に入った詩をメモすること。スマホのメモでも十分です。落ちたときに読み返す用の「自分の救命箱」みたいにしておくと、ちゃんと役に立ちます。

しんどい日に効かせる「使い方」3つ

私がこの本を読んでいて実感したのは、詩集は「読む」より「当てる」ほうが効くということです。気持ちのどこが痛いのかが分からないときほど、言葉を当ててみる。すると「いま私がつらいのはこれかも」と輪郭が出ます。

おすすめの使い方は、この3つです。

1つ目は、1ページ目から読まないこと。ぱっと開いたページを読む。偶然に頼るほうが、頭が固まっている日に入りやすいです。

2つ目は、読んだあとに「今日の自分にできること」を1つだけ決めることです。大きな目標じゃなくて、コップ1杯の水を飲む、湯船に入る、返信を明日にする、くらいで十分。詩の余韻を生活に落とすと、気持ちが散りにくくなります。

3つ目は、言葉が刺さらない日も予定に入れること。読んで何も感じない日があってもいい。むしろ、それが普通だと思います。効く日だけ効けばいい、くらいの距離感のほうが続きます。

プレゼントにも向く理由

この本って、贈り物に選ばれやすい印象です。その理由は、押しつけないからだと思いました。

「こうしなよ」と指示しない。弱っている人を、無理に前向きにしようとしない。代わりに、静かな場所を渡してくれる。だから相手に負担が少ないんですよね。

私は、自分が落ちたときにも、誰かが落ちたときにも、こういう本がひとつあると安心だと思います。

注意点(しんどいときは無理に響かせない)

やさしい言葉でも、体調が悪いときは受け取れない日があります。 そのときは「感じない自分」を責めなくていいと思います。読むのをやめてもいい。今日は本が入ってこない日なんだ、と割り切る。

この本の良さは、押しつけないところです。読み手が離れても追いかけてこない。だからこそ、戻ってきやすいんですよね。

まとめ

『くじけないで』は、落ち込んだ心を無理に上げる本ではありません。息を整えて、今日を終えるための本です。

私は「頑張れ」がしんどい日に、この本の距離感に救われました。励ましに疲れている人ほど、静かに効いてくる一冊だと思います。

元気なときに読むと、優しすぎて物足りないかもしれません。でも、弱った日にこそ価値が見える本ってあります。私は『くじけないで』を、そういう「いざというときの本棚」に入れておきたいです。

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