レビュー

概要

『新版 思考の整理学』は、「頭の中の散らかり」を整えるためのエッセイ形式の思考法の本です。

仕事も家事も、タスクが増えるほど「考える時間」が削られます。すると判断は短絡的になり、余計に疲れる。

本書は、そうした状態を立て直すためのヒントをくれます。鍵になるのは、メモを残すこと、寝かせること、書くこと、捨てること。どれも地味ですが、思考の質を回復させる方向へ連れていってくれます。

最新の生産性ハックではありません。でも、時代が変わっても残る「考え方の土台」に効く本です。

読みどころ

1) 思考は「寝かせる」と育つ

印象に残るのは、アイデアや文章を一気に仕上げようとせず、寝かせて発酵させる発想です。

忙しいと「今すぐ結論」を求めますが、良い判断ほど時間を味方につけます。寝かせるためには、途中の形を残す必要がある。だからメモが重要になる。この流れが腑に落ちました。

2) 書くことは、考えることを加速させる

頭の中で考えると、同じところをぐるぐる回りがちです。本書は、書くことで思考を外在化し、整理する方向へ導きます。

書くのは立派な文章でなくていい。箇条書きでいい。書き出すだけで、問題の輪郭が見え、次の一手が出る。ここは実務でも再現しやすいです。

3) 情報を増やすより、捨てる

思考が詰まる原因は、情報不足より“過剰”であることが多いです。インプットを増やすほど焦りが増え、結局何も残らない。

本書は、思考のために捨てる勇気を促します。これは読書や仕事に効く視点だと思います。

4) 「整理」は分類ではなく、動ける形にすること

整理というと、ノート術やフォルダ分けを想像しがちです。でも本書の整理は、見た目を整えるというより、次に動ける状態へ持っていくことに近いと感じました。

たとえば、頭の中で「重要だけど難しい」課題が渋滞しているとき、分類を細かくしても前に進みません。むしろ、書き出して外に置き、優先順位を決め、手放すものを決める。その一連の判断が、思考の整理になる。ここが実務的で、読み返す価値があるポイントです。

逆に言えば、具体的なToDoアプリやフレームワークだけが欲しい人には、回り道に見えるかもしれません。けれど、ツールを変えても散らかる人は散らかるので、まず“考え方の癖”を整える方が早い。そういう立ち位置の本です。

類書との比較

現代の思考術は、フレームワークやツールが中心になりがちです。本書はそれより前に、「考えるとはどういう状態か」を言葉で解きほぐします。

だから、手順書というより“思考の姿勢”の本です。ツールで武装する前に、考える土台を整えたい人に向きます。

こんな人におすすめ

  • 考える時間がなく、判断が雑になっている
  • アイデアが出ず、文章も書けない状態が続く
  • インプットは多いのに、アウトプットが増えない
  • 頭の中が散らかって疲れている

感想

この本を読むと、「思考は根性ではない」と再確認できます。

考えるためには、余白が必要です。余白を作るには、捨てること、寝かせること、書き出すことが必要になる。どれも地味ですが、効きます。

また、著者の言葉は断定的すぎず、読み手に余白を残します。その余白があるから、自分の状況に当てはめやすい。読み返すたびに効くタイプの本だと思います。

実践:今日からできる3つ

  1. 「未完成メモ」を残す:途中のアイデアを捨てずに置いておく
  2. 寝かせる日を作る:今日決めない、と決める
  3. 捨てるインプットを決める:SNSやニュースの時間を1つ減らす

思考の整理は、生活の整理でもあります。忙しい時期にこそ、1章だけでも読む価値がある本です。

もう少し具体に落とすなら、「10分だけ外に出る→メモを1枚書く→その場で1つ捨てる」がやりやすいです。外に出るのは、気分転換というより、思考の回転数を上げるための切り替えです。メモは箇条書きで十分で、最後に「今日やらないこと」を1つ決める。これだけで、頭の渋滞が少し解けます。ツールではなく、習慣で思考を整えたい人に向く一冊です。

メモは、凝らない方が続きます。おすすめは「見出し(いまの悩み)+次の一手」を2行で書く形です。忙しい日でも残しやすく、翌日に読み返しても判断が早い。本書の提案は派手さがなくても、こうして小さく回すと効いてきます。

読み終えたら、まず「捨てるもの」を1つ決めてみる。小さな削減ができると、思考の余白が戻ってきます。

この本が登場する記事(1件)

本の虫達

要約・書評・レビューから学術的考察まで、今話題の本から知識を深めるための情報メディア

検索

ライター一覧

  • 高橋 啓介

    高橋 啓介

    大手出版社で書籍編集を10年経験後、独立してブロガーとして活動。科学論文と書籍を融合させた知識発信で注目を集める。
  • 森田 美優

    森田 美優

    出版社勤務を経てフリーライターに。小説からビジネス書、漫画まで幅広く読む雑食系読書家。Z世代の視点から現代的な読書の楽しみ方を発信。
  • 西村 陸

    西村 陸

    京都大学大学院で認知科学を研究する博士課程学生。理系でありながら文学への造詣も深く、科学と文学の交差点で新たな知の可能性を探求。
  • 佐々木 健太

    佐々木 健太

    元外資系コンサルタントから転身したライター。経済学の知識を活かしながら、健康・お金・人間関係の最適化を追求。エビデンスベースの実践的な知識発信を心がける。

Social Links

このサイトについて

※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。