レビュー
概要
『そういうふうにできている』は、さくらももこさんのエッセイの中でも、笑いながら「人間って本当にしょうがない」と思わせてくれる一冊です。日常の小さな出来事や、自分の体や心の癖を、変な角度から観察して言葉にしていく。その観察がやけに鋭いのに、書き方は軽い。だから、読者も重くならずに受け取れます。
私はさくらももこさんのエッセイを読むと、真面目な気持ちが少しほぐれます。ちゃんとやろう、ちゃんと生きよう、と思うほど疲れる日がある。そういう日に、この軽さは救いです。
読みどころ
1) 自分のダメさを笑えるようになる
自分を責めるときって、視野が狭くなります。でもこの本は、自分の変さを「まあそういうふうにできている」と眺める視点をくれます。責めるより、観察する。ここが大事です。
2) 文章のテンポが良く、短い時間でも読める
エッセイなので、どこから読んでも成立します。疲れている日は1話だけ読む。それで終われる。そういう本は手元にあると強いです。
3) 笑いの中に、生活の温度が残る
笑えるのに、雑ではありません。日常の不安や、どうしようもなさが混ざっています。だから読後が意外とやさしいです。
本の具体的な内容(ネタバレ控えめ)
派手な題材ではありません。むしろ、どうでもいいことが多いです。でも、そのどうでもいいことが生活のほとんどです。
体のこと、気分のこと、人付き合いのこと。自分でも説明しにくい感情を、言葉にしてしまう。しかも、言葉にした瞬間、笑いへ変えてしまう。読んでいる側は、笑いながら「分かる」と言いたくなります。
私は、この本の面白さって「結論を出さない」ところにあると思います。きれいにまとめない。ちょっと変なまま終わる。その終わり方が、現実と同じです。人生って、だいたいそんな感じで次の日に行きます。
さくらももこさんのエッセイの中での立ち位置
さくらももこさんのエッセイは、笑えるのに、どこか寂しさの混ざることがあります。この本も同じです。ただ、私は特に「体や心の癖」を扱うときの距離感が好きでした。
真面目に語ると重くなるテーマを、軽い視点で扱う。でも、軽さでごまかしません。だから読後に、変に前向きにならなくてもいいと思えます。落ちた気分を無理に上げるのではなく、日常の高さへ戻す。そういう効き方をします。
読み方のコツ
この本は、学びを探しすぎないほうが楽しめます。笑える表現があったら、そこで止まって味わう。気に入った一文があったら、覚えておく。そういう読み方が合います。
落ち込んでいる日は、一気読みより「短く読む」のがおすすめです。1話だけ読んで閉じる。少し笑えたら十分です。エッセイは、気合いで読むものではないと思います。
類書との比較(「ちゃんとしなきゃ」をほどくエッセイ)
エッセイには、人生を前向きに整える方向の本もあります。でもこの本は、整えるより先に「整わない自分」を肯定してきます。良い意味で、立派な読後感がありません。
私はここが好きでした。頑張る気力がない日に、前向きな言葉は重いことがあります。そんなときに、この本の「しょうがない」という目線は助かります。諦めではなく、体力の配分です。
読後に残るもの(元気より、通常運転)
読み終えて残るのは、テンションの上がり下がりではなく「日常に戻る感覚」でした。落ちている気分を引き上げるのではなく、少しだけ平らにする。そういう効き方です。
それに、読み返しやすいのも強いです。忙しい時期は1話で止められるし、余裕がある日は続けて読める。エッセイって、生活のペースに合わせられるのが良さだと思いますが、この本はその相性が特にいいです。
こんな読み方もおすすめ
- 「笑ったところ」だけ付箋を貼る(後で読み返すと効きます)
- しんどい日の朝に1話、寝る前に1話だけ読む
- 人にすすめるなら、刺さりそうな1話だけを先に渡す
この本の笑いがやさしい理由
笑えるエッセイって、勢いだけだと雑になりがちです。でもこの本は、笑いの奥に生活の温度が残ります。自分の失敗を大きく見せつつ、どこかで自分を責めすぎない。そのバランスが、読んでいて安心できるんですよね。
「人間って面倒だな」と思う場面でも、切り捨てずに眺める。私はその姿勢が、この本の一番の魅力だと思いました。
こんな人におすすめ
- まじめな本が続いて疲れている人
- 日常の変さを面白がれる人
- エッセイで気分転換したい人
- 読後にやさしい余韻の残る本が好きな人
感想
この本を読んで感じたのは、人生って「ちゃんとした話」だけではできていないということでした。むしろ、くだらない出来事や、しょうもない失敗でできている。その積み重ねを笑えると、生活が少し楽になります。
元気が出るというより、力が抜ける本です。頑張りすぎているときほど相性がいい。そういうふうにできている自分を、少し許せるようになる一冊でした。