レビュー

「将棋漫画」と聞いて敬遠するのはもったいない。これは孤独と再生の物語だ。

主人公の桐山零は17歳のプロ棋士。幼くして家族を失い、才能だけを頼りに生きてきた。勝負の世界でしか自分の居場所がない。そんな彼が、3姉妹との出会いを通じて「人と生きる」ことを学んでいく。

将棋のシーンは確かに多いが、本質は人間ドラマ。対局相手それぞれに人生があり、背景がある。勝者の喜びと敗者の悔しさ。その両方を丁寧に描くから、読んでいて心が動く。

羽海野チカ先生の絵が素晴らしい。静かなシーンでの繊細な表情、激しい対局での迫力。言葉にならない感情が、絵から伝わってくる。

「誰かのために強くなりたい」。零がそう思えるようになるまでの過程が、この作品の真髄。読むと温かい気持ちになれる。疲れた心を癒してくれる漫画。

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