レビュー
「天下の大将軍になる」——戦災孤児の夢が、中華統一の歴史を動かす。
紀元前3世紀、春秋戦国時代の中国。奴隷の身分から這い上がった少年・信は、後に秦の始皇帝となる嬴政と出会い、天下統一という壮大な夢を共に追い始める。
原泰久の取材力と構成力は圧倒的だ。史実をベースにしながら、登場人物に血を通わせ、読者を紀元前の戦場に引き込む。戦術、政治、人間ドラマ。全てが高水準で融合している。
圧巻は合戦シーン。何万もの兵士が激突する大規模戦争を、一人一人の視点で描き切る。王騎将軍の最期、合従軍編の絶望と逆転、読者の心臓は何度も止まりそうになる。
「人を動かすもの」への洞察も深い。信のように自ら剣を振るうリーダーと、嬴政のように人を束ねるリーダー。李牧の知略、王翦の冷徹。様々なリーダーシップの形が描かれる。
70巻を超える大作だが、今が読み始めの好機。秦の統一まで、この物語はまだまだ続く。